星新一との出会いは、国語の教科書だった。
自分ごときがここで紹介した本なんか手に取る人はまずいないと思うので、容赦なくネタバレしていくが、星新一の『おみやげ』というショートショートが教科書に載っていたのである。
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高度な科学技術を持つ異星人が地球へやってきた。しかし地球には、まだ人間がいなかった。温厚で思いやりのある異星人は、この星に将来、知的生命体が誕生したときのため、タイムカプセルを埋めておくことにした。タイムカプセルには、文明の発展を助け、知的生命体の精神性を育てるのに役立つ、さまざまなオーバーテクノロジーが詰め込まれていた。
だが時が経ち、人類が繁栄する頃、タイムカプセルは誰にも気づかれぬまま失われた。タイムカプセルの埋まっていた砂漠が、核実験に使われたのだった。
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異星人の親切心も、未来への希望も、はるか遠い宇宙の異文明への手がかりも、タイムカプセルが待ち続けた幾万年・幾億年の時間も、人類のどうしようもない無神経さ粗暴さのせいで粉々に打ち砕かれ一瞬で台無しになってしまう身も蓋もないストーリーに、自分は衝撃を受け、そののち書きちらすことになる『魔鉱騎兵物語』や、『天狼のライラプス』や、『現想騎フォアシュテルング』や……自分の書くものすべてが、『おみやげ』(というか、星新一のシニカルな哲学)の影響を受けている。
で、この記事のタイトルがなぜ「最強説」なのかといえば、国語の教科書は、頭のいい大人達が子供のために本気で考えた傑作文学撰だと思うからだ。多感な時期に星新一の作品と出会えたことはマジで感謝しているし、このような傑作選を義務教育で毎年読める子供達は恵まれている。
中高生のカクヨム作家さん達は、ユーチューブの解説動画やら怪しげな素人創作論やらに頼る前に、国語の教科書をきちんと読んでみてはどうか。(本の虫なら教科書ぐらいとっくに読破してるよね?)SFしか載っていないわけではないから、誰でも心に残る生涯の宝物が見つかるはず。
星新一の『おみやげ』は、短編集『ボッコちゃん』(新潮文庫)に収録されている。