メリークリスマス!環月紅人です!
先日、Xのほうで仲良くしていただいている白木犀(@hakumo_610)様より素敵なクリスマスファンアートを頂きました!めちゃくちゃかわいいセシリア!!
嬉しい!!!
いや、実はこちらでは紹介できていないのですが、他にもセシリアのめ〜〜〜っちゃかわいいイラストを白木犀さんにはたくさんいただいているんです! 本当に素晴らしいです!! Xのほう見にきてください!! プリンを食べるセシリアやコーディネート回のセシリア、ハロウィン衣装のセシリアがいますよ!! 素敵すぎる。実はハロウィンでも今回と同じことがしたかったっ……っ!笑
というちょっとした後悔もありつつ、クリスマスは間に合ったので、女騎士が付いてきた数年ぶりの新作、クリスマス記念SSなんかをどうぞ(*´艸`)
タクヤとセシリアとルカが楽しいクリスマスを過ごすお話です〜〜〜!!🎄
素敵なファンアートは記事↓で紹介!!
―――――――――――――――――――――――
「今日はクリスマスだってのにバイト三昧で恋人のセシリアさんを放っとくようなさもしい性格のおにいのために、優しい妹が一肌脱ぎに来たよ」
「ルカ殿! 今日は平日なのにどうしてこちらへ?」
「フフフ。学生には冬休みってものがあるのだよセシリアさん」
今年のクリスマスは水曜日だった。
タクヤが留守にしている昼間、タクヤとセシリアが住む家の玄関先には鼻高々そうに腕を組むコート姿のルカがいる。
どうやら高校が冬休みになるや否や、兄のためにわざわざこちらまで足を運んできたようだ。
「一緒にチキンとかケーキ買いに行こ!」
「え! 行きたいです!」
外出の気配を感じ取り、たまらずセシリアが見えないしっぽを振る。その仕草は散歩の時間を察知して腰を持ち上げる大型犬みたいだ。
タクヤが帰ってくるまでの間にサプライズクリスマス会の準備をする。
そのため、ルカとセシリアは買い出しに出た。
♢
二人が真っ先に目指したのは大手ディスカウントストアと百円均一店だった。ここでは質素な部屋を盛り上げるため、クリスマスにまつわる雑貨をこしらえる。
全ての費用は経費で落ちる(お兄ちゃんに払わせる)ので、ルカはここぞとばかりにオーナメントやオブジェの類をカゴに放り込んでいった。
「ねえねえセシリアさん、一緒にこれ着ない?」
「サンタ服? ですか??」
「そう!」
ルカはお店で販売されているクリスマスのコスプレ衣装を手に取る。過激なデザインではなく、どこに出ても恥ずかしくないような王道のレディースサンタ服だ。
「セシリアさんがサンタさんになったら、お兄ちゃんきっとすごく喜ぶよ」
「ほ、本当ですか?? それなら……」
兄のためと理由付けすると少しだけ顔を赤くしながら乗り気になるセシリア。年上であるにも関わらず、恋する乙女のそんな横顔をルカはニマニマとご満悦そうに見つめる。
相変わらず、セシリアさんはかわいい人だ。
「それでそれで、何かプレゼントも選ぼ。なんでもいいよ、この小さな箱に入れてプレゼントするの。開けたときに面白いものがいいと思う」
例えば、カエルのおもちゃとか。兄をからかう面白みを知っているルカはついついイタズラを計画したくなるが、一方でセシリアは顎に手を当ててムムムと考え込む。
「何なら喜んでくれるでしょう……?」
「なんでもいいと思うけどなぁ」
悩むセシリアを連れながら店内を見回る。すると、通路傍でスノードームの手作り体験コーナーがあったので。
「コレ、ちょうどいいんじゃない?」
「ほう……?」
試してみることにした。ガチャガチャのカプセルほどの大きさの球体に、思い思いのミニチュアを飾り、グリセリンと水を混合させた液体を流し入れて完成させる簡単なスノードームだ。
中に入れるミニチュアはツリー、トナカイ、サンタ、ソリなどクリスマスらしい定番のものから、お家、猫、犬、クマ、お魚など多種多様なラインナップがある。
あまり詰め込みすぎるとスノーパウダーが舞いにくくなってしまうけれど、それも含めて手作りの醍醐味だ。
販売員の方にやり方を教わりながら、セシリアとルカは自分の思う最高のスノードームを作っていく。
貴重な体験だった。
「楽しかったですね!」
「いい贈り物ができたんじゃない? よかったね!」
ルカは自分用に。セシリアはタクヤへのクリスマスプレゼントに。
満足のいくスノードームが作れたみたいでほくほく顔の二人は、次にフライドチキンのチェーン店に足を運び、また別のお店で当日販売のクリスマスケーキを購入する。
帰宅する頃には日没を迎えていて、慌ただしく設営に取り掛かることになった。
「まずいまずい! セシリアさんはもう着替えちゃって!」
「えっえっ!? ルカ殿は!?」
「飾り付けしないと! もぉ誰なのこんなに雑貨買った人……っ!?」
ぶつぶつ自分に対してぼやきながら、ルカが室内をバルーンや電飾やオーナメントで飾り付けていく。
水だけで作れる溶けない雪(フェイクスノー)を用意したルカは、それを雪玉にするとサンタ服を着たセシリアに分け与え、なんとかタクヤを迎え打つ準備が済ませることができた。
一緒にサンタ服を着る予定だったのにセシリアだけだ。セシリアはとても気恥ずかしそうにしている。
ガチャ、と玄関扉が開く。
♢
「――わぷっ」
「「メリィークリスマースっ!!」」
……………。
なんつー出迎えだ……。
玄関扉を開けて早々、顔面に雪玉が叩きつけられたかと思えば、いつもの「おかえりなさいタクヤ殿!」ではなく、ステレオ音声でクリスマスをお祝いする言葉が帰宅したばかりの俺に投げかけられる。
顔にへばりつけた偽物の雪を払った俺は、やっぱりお前の仕業か!と恨めしい目でルカを睨もうとした。
――それよりも、ルカの隣にいたサンタ服のセシリアに目が奪われてしまった。
「どっ、どうでしょうかタクヤ殿……!」
恥じらいを押し殺した感じで俺に感想を求めるセシリアの格好は、素直に可愛らしいものだ。少しだけセシリアのことが幼く見える。濃灰色の髪色に対して、映える赤色のサンタ服だからよく似合う。帽子の代わりに赤いリボンをサイドに留めているのがチャームポイントとなっていて、それが特に幼なげな印象に拍車を掛けているような気がした。
「いや……。似合っているけど……」
「うっわ素直じゃない。おにい分かってる!? セシリアさんが、おにいの恋人がいまサンタのコスプレして目の前にいるわけだけど!!」
「わ、分かってるって」
「いーや分かってない。もっと褒めるべき」
「お前がいるとやりづらいんだよ……!」
なんで妹に見守られながら言わなきゃならんのだ。人の恋愛に過干渉すぎる。呆れた顔で後頭部をガリガリと掻きながら、根負けしたように俺はセシリアに向かって素直に感想を伝える。
「すごく、かわいいと思う。悪くないんじゃないか」
やっぱり遠回りな表現になった。
気恥ずかしさが拭いきれない。絶妙に変な空気になってしまっていると、セシリアからは見えない覚悟で『良いって言え!』と声に出さないまでもすごく威圧されたような気がした。
「……いや、かわいい。似合ってる。最高」
「言わされすぎじゃないですかタクヤ殿!?」
俺がサムズアップをして褒めるとさすがにセシリアが困惑する。「あーあ」と悪びれもせず、ルカはやれやれポーズを取った。
「別に嘘ではないから」
「うぅう〜!」
適度に緊張が解けて、恥じらうセシリアに微笑み返しながら。
俺たちはクリスマスパーティーを行うことになった。
「部屋がやばいことになってる……。これ誰が片付けんの?」
「あたしは終電で帰るね」
「ふざけんなお前」
一夜にして我が家がクリスマスカラーに塗り替えられていることに呆れる。
「俺もケーキ買ってきたんだよ実は」
「あたしの分ある?」
「あるわけないだろ。来ると思ってないんだから」
「けちー」
食卓の上にはケーキが大量だ。
三人で囲みながら、チキンを食べたり、数年ぶりのシャンメリーを飲んだり。サンタセシリアは夢中になってフライドチキンを食べている。
「セシリアさんセシリアさん、そろそろアレあげちゃう?」
「ほむ! ひいへふね! ひまほうひまほう!」
「呑み込んでから喋りなさい」
わんぱくなセシリアに苦笑する。すると、手を洗ってしばらくした二人は、五センチ四方ほどの小さなプレゼントボックスを一つずつ俺に差し出した。
「はいっ。タクヤ殿!」
「お、おう」
屈託のない笑みを浮かべたサンタからありがたく受け取る。中はずっしりとした重みがあって、「開けていいか?」と確認しながら内容物を見させてもらった。
箱の中身はスノードームだ。
サンタと、トナカイの代わりに白い犬のミニチュアが添えられていて、家と一本のクリスマスツリーがある。
振ると綺麗に雪が舞った。
「こちら、私が作ったんですよ!」
「そうなのか? それは、すごいな……」
トナカイじゃないから違和感は感じていたが、普通に面食らう。感心してしまったようにまじまじとスノードームを見つめた。
「……ありがとう。嬉しい」
なんだか、俺とセシリアがこの中にいるみたいだ。
思わず笑みが溢れる。
「あたしの分忘れてるよ、おにい」
「お前のはだいたい中身分かってるからいらない」
「ひっどい!」
暴れるな暴れるな。ずっとスノードームを見つめていたいのに、ルカがぎゃあぎゃあ騒ぐ。信用に欠けているのは自分のせいである。
中身どうせカエルか虫のおもちゃだあれは。
「ありがとう、セシリア」
「はい……!」
嬉しそうにセシリアがはにかむ。
俺だって嬉しくてはにかむ。
自分からこの場に来ているくせに、ジトっとした目でそんな俺たちのことを見守るルカには呆れたものを感じながら。
俺たちは素敵なクリスマスを過ごした。
セシリアから貰えるものはなんだって嬉しいけど、これは――最高のクリスマスプレゼントだ。