• 現代ファンタジー
  • ミステリー

エッセイのようなもの『失言』



—何かしたいくせに、寝返りをただ打っている。布団が、布団が熱くてたまらない—

 私はたまに失言してしまう。時々スイッチが入って、わざと嫌なことを言ってしまう瞬間がある。

 元々働いていたバイト先では、Aさんが辞めることになり、彼女の最終出勤日に、
「お疲れ様です。また会えれば……」
 Aさんがそんな風なことを言ったことに対して、
「いや、もう会うことはないだろうね」と言ってしまった。
 その瞬間も、その後もどうしてそんなことを言ってしまったのか、自分でもよくわからないが、とても後悔している。
 別にその時、私の機嫌が悪かったわけでもなく、嫌がらせをしてやろうと思っていたなんてことはない。
 ただ、つい気持ちよりも先に口走ってしまっただけなのだ。

 だから、Aさんにもし会える機会があるのであれば、私はAさんに頭を下げて謝りたい。

 ところで、どうして私の意図しないところで、そんなことを言ってしまったのか。それに対して、最近気づいたことがある。

 当時はなんとも思っていなかったのだが、自分が気づいていないだけで、Aさんのことが好きだった。今更ながら、その淡い恋心に最近気がついた。
 つまり、好きだからこそAさんがバイトを辞めるのが嫌であって、最後に変な嫌味をぶつけてしまったのだ。
 我ながら、女々しくて、なんと情けない話だろう。

 そんなことを時々、寝る前に考えてしまう。

 ちなみにこの話にオチはない。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する