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『蒼海孤剣録』Episode 1 by 光闇居士
戦国末期、血に塗れた九州を捨て、西へ西へと流れた一人の侍がいた。 榊原弦十郎——かつては無双の剣士と謳われ、妻子と主君を愛した男。 しかし裏切りと炎にすべてを奪われ、彼の剣はもはや「守る」ためのものではなくなっていた。死に場所を求めて乗った倭寇の船は、東シナ海の狂った嵐に飲み込まれる。 船は真っ二つに裂け、弦十郎は冷たい海底へと沈んでいく。 その時、彼の脳裏に蘇ったのは、主君の最期の言葉——「生きよ、弦十郎」。奇跡的に明の沿岸に打ち上げられた彼を待っていたのは、飢えに苦しむ貧しい少女の姿だった。 ここはもはや日の本ではない。武士の掟も、侍の誇りも通用しない、残酷で自由な「江湖」の世界。すべてを失った「無」の存在として、弦十郎は再び剣を握る。 これは単なる侍の物語ではない。 明の海に漂着した日本人が、武侠の大地で自らの「義」と「武」を問い直す、壮大なる叙事詩の始まりである。