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★9/15 陰キャンプスピンオフNO1『木村 樹』


「お、おはよう! 今年も同じクラスになれて、嬉しい……!」

 中二になった初日、樹は教室へ入ってくるなり、俺のところへやってきて嬉しそうにそう言ってくる。

「あ、ああ、そうだな……よろしく……」

 俺はできるだけ樹の"顔以外"は見ないようにして、答える。
しかし顔も、この一年でちんちくりんだったものから、やや大人びた骨格に成長している。
特に、瑞々しさを放つ、樹の唇が印象深く頭に残る。

「おいくん? なんかぼぉっとしてるけど、大丈夫……?」

 気がつくと樹は俺にグッと顔を寄せて、心配そうに覗き込んでいた。

 ふわりと薫ってきた樹の健康的な匂いと、随分立派に膨らんだ胸に怯んでしまった俺は、身を逸らす。

「ち、近い……!」

「あっ、ご、ごめんね! でも、心配で……」

「例の如く、ゲームのしすぎだから……」

「そ、そう……」

「おっはよー、いっちゃん!」

 と、絶妙に微妙な空気に陥っていた俺と樹の間に、蔵前の明るい声が割り込んできた。

「お、おはよ、くーちゃん。しーちゃんも」

「またウチらおなクラだねぇ。よろしくねぇ!」

 蔵前と同じく、しーちゃんさんこと鹿山さんも、同じクラスとなった。
この2人がいれば、樹が孤立することはもうないだろう。

「よぉ、香月! 今年もよろしくな!」

そう声をかけてきたのは、一年の時一緒にフォレストワールドへ行った男子の片割れの牛黒。
こいつとはなんだかんだ、ずっと付き合いが続いている。

「よろしく。急にまた変な画像送ってくるなよ」

「へっへっへ! 実は、さっそく香月大先生にお見せしたいものがございまして……」

 牛黒は自他ともに認めるエロ魔人で、ネット上で拾った画像とかをよく俺へ送りつけてくる。
俺自身、そういうことに興味はあるし、牛黒の目利きは確かなのでありがたい供給源ではある。

「お見せしたいって、学校じゃまずいだろ? お前が送ってくるの結構過激だし」

「まぁまぁそう言わず、見てからいってくれや!」

 牛黒は拒否る俺へ無理やり、自分のスマホを見せつけてきた。

 その画像を見て、俺の心臓が拍動を強める。

「こ、これって……」

「なっ? 似てるだろ?」

 スマホの中ではスクール水着を着た女の子がプールサイドで妖艶なカメラ目線を送っている。
眩しく感じる肉付きの良い太もも、まだ未熟ながら水の裏で膨らんでいる胸の存在。

「木村にめっちゃ似てるよな、この土肥 明根ってモデル!」

 髪型はポニーテールで、顔だってよく見てみれば全然違う。
だけど、この土肥 明根とかいうモデルを見た瞬間、俺の頭の中にも樹に重なる部分があった。

「で、どうよ? 本物をいつも拝んでいる香月大先生からしては?」

「ほ、本物ってなんのことだよ?」

「だって、お前いっつも木村と一緒にいるじゃん。だからみたこと……いや、揉んだことくらいあるんだろ!?」

「無いってんなこと! 俺と樹は別にそういうのじゃ……」

「俺知ってるんだぜ? お前が春休み中、木村を自転車に乗せてるところを……」

 勝手な言い分に少し苛立ちを覚え始めた時のこと、新しい担任の先生がやってきた。
牛黒は悪びれた様子もなく、そそくさと離れて自分の席へと向かって行く。

 そうして真面目に新担任の挨拶を聞いている最中、スマホが震えた。

 相手は牛黒で、RINEへ先ほど見せられた"土肥 明根"とかいうモデルの画像が送り付けられていた。

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