ある日俺は人々の頭の上に数字が見え始めた。
そのよくわからない数字は
絶え間なく減ったり増えたりしている。
一体何なんだろうか。
ときに何万という数字がついているやつもいる。
テレビの中の芸能人にももれなくついている。
いま売れっ子のあの女優はすごい数字だな。
誰も気づいていないのか?
世の中で俺だけが見えるのか?
SNSに同じつぶやきがあるか検索してみる。
どうやら居ないようだ。
俺には‥なんだ、無いようだな。
いつものように朝飯を食べる。
母にも父にもその数字がついている。
少ないが、やはり誰にでもあるようだ。
数字が少ないのは残りの寿命なのか?
だがしかし昨日より増えているのは妙だな。
父は最近趣味のカメラに没頭しているようだ。
母と嬉しそうにカメラサークルの話をしている。
幸せそうで何よりだ。
俺と言っては最近彼女と別れたばかりだ。
時折フォローしている彼女を未練たらしく覗きに行く
レンくんの事は嫌いになったわけじゃないから
友達としては繋がりたいな
なんて都合のいい言葉を言い放ったその女を思い出す。
俺の気も知らないで
楽しそうな写真を毎日のように更新する。
切れない俺も、俺なんだけど。
友人の一人が儲け話を更新している。
またあいつ、新手のマルチを始めたのか
懲りないやつだな。
一度寝た女が、知らない男と親密そうな写真を更新している。
その赤ら顔を見て
こいつホント股ゆるい女だよな、と軽蔑する。
もう二度と現実世界で会わないであろう友人は
また新しい事業を立ち上げたようだ。
うだつの上がらない自分を棚に置き
その更新はサッとスクロールする。
別にブロックしても構わないんだけどな
仕方ないからそのままにしておいてやる。
‥早く失敗しろ。
だんだんと焦りと苛立ちが募ってきた。
俺は画面をホームに戻し、電源を切って寝転がった。
「あ。」
天井の上に、ゆっくりと減り続ける数字が浮かんでいた。