• 異世界ファンタジー

ギフトに感謝です。

 日頃より拙作を応援してくださる皆様、そしてギフトを送ってくださった皆様。ありがとうございます。
 何かしらお礼をしようとフォルダを見返したところ、『群れを追放された俺~』の一話のプロト版を発見しました。

 シリアスな作品と勘違いされる恐れがあったため書き直しましたが、折角ですのでここで供養させていただきます。
 所々の表現が違ったり、スライム語のレパートリーが少なかったりと言った違いがあります。
 特に新情報はありませんが、気になる方はご一読ください。




「スラス、スラスーラ!(おい役立たず、お前は群れから追放だ!)」

 スライムコロニーの隅の隅。日当たりの悪い岩陰で分け前の木の実を食べていた時のことだった。
 赤く一際図体の大きいスライム、スラ太にそんなことを告げられたのは。

「す、すららぁ……。スラスラララス!?(な、何でだよ……。どうしてオレが追放されなきゃなんないんだ!?)」

 突然の宣告にオレは訊き返す。

「スラッス、スラースラ!(そんなの決まってるだろう、お前がウサギ一匹倒せない雑魚だからだ!)」

 たしかに、青い体色の一般種スライムとは違い、灰色のオレは力が弱く〖溶解液〗の威力も低い。攻撃は不得意だ。
 けどその分、他のことで群れに貢献できるよう頑張って来た。
 高い〖タフネス〗でスライム達を庇ったことだって数えきれないくらいある。

 そんなことを論理立てて必死に弁明したが、スラ太は取り付く島もなかった。

「スララスッラ、スラスースラーラスラッ(バカ言え、お前なんかいなくても俺達は平気だッ)」

 たしかにスラ太はそうかもしれない。
 レア種のブラッディスライムであるスラ太は〖ライフ〗が豊富だ。
 ゴブリンの攻撃が直撃してもピンピンしている。

 だけど、他の一般種達はそうじゃない。
 一撃で相当量の〖ライフ〗を削られるし、それをオレが防いでいることも知っている。
 きっと俺を庇ってくれるはずだ。

「ススラ、スッラ(オマエ、ヨワイ)」
「スラ、スラ(イラナイ、イラナイ)」
「スララララ、スーラ、ラッス(ギャハハハハ、ザコ、デテイケ)」
「すらぁ……(そんな……)」

 そう思って周りを見ても、返って来るのは罵倒や嘲笑ばかり。
 スラ男もスラ郎もスラ左衛門も、オレを助けてくれそうにない。

「スララーススラースラ(分かったらとっとと出ていけ)」
「……スラ(……わかったよ)」
「スラッスーラ、スララスラ(おっとその木の実は置いてけよ、それは俺達が集めた物だからな)」

 食料採集にはオレだって同行してるし、今日だって二つの木の実を持ち帰った。
 だけど、そんなことを言ってもスラ太達は聞き入れてくれないだろう。

「スラッ(ほらよ)」

 食べかけの木の実を放り捨て、俺はコロニーの外へと進んで行く。
 そんな時だった。

 ──ゴンっ。

 体を何か、硬い物が打った。
 背後から石が投げられたのだ。

「スララッ、スッラ、スッラ(アハハッ、アタッタ、アタッタ)」
「スラ、スーラース(ツギ、オデガヤル)」
「スラススラッス(アタシモモッカイッ)」

 ──ゴンっ、ゴンっ、ゴンっ。

 スライム達はどんどん礫を投げて来た。
 どれもそこそこ狙いが良くて、半分以上がオレに当たる。

 ……この投石だって、攻撃手段の乏しいスライム達のため、オレが考えたものなのに……。

「スラぁ……(痛い……)」

 オレの〖タフネス〗なら投石程度、僅かな痛痒にもならない。
 けれど、体ではなくその奥が、胸の内が痛かった。
 石が体を叩くたび、心を直接|打《ぶ》たれているかのような痛みに襲われた。

 オレはあいつらを仲間だと思っていて、ずっと力を尽くして来たのに。
 結局、あいつらはオレを仲間だと思ってはいなかったのだ。

「スラ……っ(クソゥ……っ)」

 叫び出したい衝動に駆られ、けれどそんな気力はすぐに抜けて行く。
 |閾値《いきち》を超えた激情は、暴れず萎んでしまうのだ。
 そのことをオレは今、初めて知った。

 収縮していく感情が、胸を締め付け息が詰まる。
 擦り切れたように赤く熱くなった心の奥から、ナニカが溢れそうになる。
 だけど、スライムに視界を滲ますナニカは出なくて。
 ただただ息苦しさだけが募る。


 ──こうしてオレは、スライムコロニーを追放されたのだった。



~非通知情報記録域~~~~~~~~~~~
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>>|不破勝《ふえとう》|鋼矢《こうや》(ラフストーンスライム)の本世界への定着が完了しました。
>>【階梯能力:|収穫最《ベストハーヴェスト》】が活性化状態になりました。
>>解析結果を〖ステータス〗に追加しました。
>>階梯能力解放に伴い、|不破勝《ふえとう》|鋼矢《こうや》の記憶が一部復元されました。
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