「3年遅れの罪の告白」への感想

子鹿さん(@kojika_charme)の自主企画「文学性の高い作品、集まれ!」の参加のためのノートです。
ネタバレを含みますので、「3年遅れの罪の告白」をお読みになってから目を通していただければ幸いです。

*好きな登場人物:今村和紗
 好きな台詞:あなたになら、どんなひどいことをされても受け入れちゃうと思った(今村和紗)
*キリの良い話数:1-5話
*具体的な想定読者:恋愛小説が好きな大学生

今回の企画は、「魅力あるキャラクター性」に関するものだということでした。
初めて書いた小説ですが、この作品で描いた「今村和紗」の繊細な心うちが伝わればと思います。

何卒、感想の方をよろしくお願いします。

1件のコメント

  • こんばんは
    遅くなりましたが、ご参加ありがとうございます

     本作の主人公と著作者とは、同じ名前ではありますが、私小説ではない前提で書かせていただきます。

     まずは、第一作目となる小説の完成、お疲れさまでした。
     小説を書く上で最も必要な力は、物語を書き上げる根気なんじゃないかと、近頃思う次第です。書き上げ、推敲して、公開するまでの苦労と努力に敬意を表します。

     では、本題に入ります。


    【総評】

     小説としての評価は高くない。しかし、技術的なものは、書き続けることで着実に身に付いていくので、今は、心情変化を丁寧に追っていけると良い。

     小説を書きたい、との思いが先行するあまり、小慣れたような言い回しや、妙に凝った書き方をしてしまっています。そのため、文字数に対して内容が薄く、書き手独自の視点や色合いを感じられません。
     ストーリー自体がありふれた幼い恋愛であるために、悲劇の主人公を気取る友人の、長い思い出話を聞かされているようでした。

     ある意味、リアリティがあるといえますが、誰もにありふれた経験を作品として昇華するほどには、表現が足りていません。
     登場人物たちの葛藤や、ままならない思いを、一つずつ丁寧に拾い上げて、自身の言葉で描写してほしいと思いました。


    【構成について】

     叙述トリックを意識しているのでしょうか。彼女が別れを切り出した理由を謎として提示し、結末でその理由が明かされる。

     しかしですね、彼が本当に「大学2年の今もわからない。彼女の真意は、なんだったのだろう」とか思っているのだとしたら、結構ヤバい奴ですよ、コイツ。

     カラオケルームで、性交に及ぼうとした(未遂と読み取りました)末に、痛いと叫ばれ、デートDVであること、和紗が「もうそれを我慢できないことを知った」わけですよね。
     さらに、親同士が電話し合うほどの問題に発展して、「ひどいことしたのか」と問われ。

     それから、「別れよう」と言われておいて、「真意がわからない」とは……。

     読み手への「ヒキ」を意識していることは、大変よろしいことですが、今回の場合は、この構成が「彼」のキャラクターとしての魅力を損なわせています。
    (ていうか、反省しろよ、すまないとか一遍も思ってないじゃん、とヘイトを起こさせています。一人称の語りなので、反省の伺えないことがなおさら、です)


    【視点切り替えについて】

     第1話のみ和紗視点、残り4話は彼氏点ですが、視点切り替えの意図はなんでしょうか?

     唐突な別れを告げられた主人公が、三年越しに彼女の真意を知る。

     物語の筋からしても、和紗視点は隠されていた方が、読者にも混乱と驚きを与えられます。

     第2話での切り替わりも気付きにくく、さらに3話では過去回想となるので、読み手としては、視点と時勢の把握に手間取りました。
     全編彼視点であっても問題ないと思います。


    【地に足着かない台詞、地の文について】

     こうすることが、罪深い行為だとわかっていたのに、私にはそれを止められなかった。

     少女が、禁忌を冒す。物語に相応しいテーマ、描写ですが、別れ際にハグをすることは、そんなにも「罪深い行為」なのでしょうか。
     てっきり、キスする振りして首を絞めるくらい仕掛けたのかと思いました。

     タイトルもそうなのですが、用いられる言葉と実際の内容に隔たりを覚えさせます。大仰な言葉に相応しいほどに、心理描写が足りていません。

     一緒に日々を重ねる(に?)つれ、僕と彼女の想いはどんどん深まった。

     その交流を具体的に、全編を通して書いてほしいです。
     クリスマスのプレゼント交換は、端的ながら、二人が本を大切にする為人であることを表している良いエピソードでした。



     以上、簡易ながら批評レポートをまとめさせていただきます。
     少し厳し目な内容になってしまいました。初めにも書きましたが、今回の批評含め、技巧的なことはあまり気にせずに、本当に書きたいと思った心情やシーンを軸に定めて物語を描いていってください。
     次回作も楽しみにしています。

    ありがとうございました
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