創作の原風景は孤独だった。ひとりぼっちの自分を慰めるために、心の奥底を探った。そのずっと奥の深いところに、海のような藍色の石ころがあった。決して宝石じゃない。でも綺麗だった。それを、そこに眠るもう一人の自分を、見せたくなった。
見栄、嘘、虚構、虚飾、名声が欲しい、金が欲しい、認められたい、チヤホヤされたい、俺には才能があるんだと、そう天狗になったことすらあって、気づけば石は、巨大なヘドロの塊になっていた。
本当に大切な、自分自身を閉じ込め、一人にしてしまった。誰よりも孤独が怖くて、嫌いで、白状すれば、あまりの孤独感に寝入りばな泣くことすらままある俺が、そんな愚行を繰り返していた。
とにかく今は、ヘドロを落とす。石を取り出して、寂しがっている、幼い俺を抱きしめにいく。
そうして、謝って、また、一緒にものづくりをする。
俺の筆は折れた。でも、筆箱にはいっぱいペンがある。シャーペン、ボールペン、コピック、万年筆、マーカー。代わりの筆は腐るほどある。なんならApple Pencilだって。
たかが一ヶ月だ。たかが一ヶ月、結果が出ないだけだ。そんなやつザラにいる。見栄を張るな、嘘で偽るな、本当に、本当に自分が思い描きたいものはなんだ。
逃げてもいい、戦わなくてもいい。でも、人生という芸術を作る、その、せいぜい80年余りの短すぎる作業時間くらい、正しく生きて、懸命に強く生きて、生きることから逃げずに、最高の作品を作れよ。
まずは一ヶ月終わっただけ。じゃあ、次の一ヶ月だ。それでだめなら半年だ。
もう知るか、俺はもう、物作りの果てにいつ死んでも後悔のない人生を選択する。
誰に読まれるでもない、死後、評価されることもなかったとしても、自分を芸術家だと誇れる、気高い、夢咲蕾花として幽世に旅立つために。