この小説は、小説家・坂上秋成(さかがみしゅうせい)さん主催の雑誌『ブラック・パスト2』に掲載された拙作「ブラック・ドット・ダイアリー」を加筆、横書きに改稿したものです。
三名の書き手が、それぞれ自分のプロットをほかの人に作品化してもらうとどうなるか? という創作実験の企画で、私は小説家・間宮緑(まみやみどり)さんにプロット(原案)をいただいて小説化しました。
間宮さんから送られてきたプロット(原案)は────
「★用意するもの ・小児性 ・涙あるいは髪の毛(人体に関係するもの) ・惑溺しないようにする」
「★材料 ・アレルギー ・病める人々の未来 ・目的を共有するという人間関係」
「★作り方 ある人に対して(またはお互いに)アレルギーをもつ。次第に悪化する。触れること。髪の毛など、見られること。書いた文字、声、等々……そんな人たちの話」
────という一見、料理のレシピのような、箇条書きの非常に抽象的なもので難しそうでしたが、よく考えれば自由度が高く作品化しやすいものでした。
私が書いたプロットは杉田悠(すぎたゆう)さんに小説化してもらいました。
間宮さんのプロットとは逆に起承転結をやりすぎて、書き手に不自由を強いるものになってしまいましたが、杉田さんはそれを逆手にとってすごい返しをしてきました。
(どんな作品になったかは、是非『ブラック・パスト2』でご確認ください)
杉田さんのプロットは間宮さんによって作品化されましたが、これは二次創作の域を超えて異次元の合作になっています。
企画に参加した三名と坂上さん司会の座談会もありましたが、今回読み直してみて、よくこんな無謀な試みがなされたものだと思いました。
当時も今もアイデアの貧しさにあえいでいる私はともかく、この企画をしっかりと成立させたお二人の想像力のたくましさを改めて感じた次第です。
さて、今回カクヨム用に書き直すにあたって、枠物語(わくものがたり)の形式を試してみました。
物語の中に入れ子式に別の物語が入る手法で、有名なところでは泉鏡花(いずみきょうか)の「高野聖」(こうやひじり)などがあります。
具体的には、5話~11話までは前作で、1話~4話と12話~17話が今回加筆した枠物語の「枠」の部分になります。
カクヨムは異世界転生ものが主流で、私が書く話は傍流も傍流ということになりそうですが、めげずに書いていこうと思います。