「あたし、資格の勉強始めてん」
学校帰りに立ち寄ったマクドで、島本がバーガーを頬張りながら言った。
「へえー。あんたでも勉強するんやね。草むしり検定5級とか?」
「誰がちいかわやっ!」
ツッコむ島本に、私は「冗談冗談」と手を振る。でも、心の中では正直、驚いていた。島本が勉強なんて言葉を口にするなんて。
「あんたが資格なんて、全然想像つかんわ。何で始める気になったん?」
「そんなに聞きたいなら、ナゲット一つで手を打ってやってもええわ」
「上から目線腹立つぅー」
聞きたいのは本当なので、私は自分のナゲットを一つ摘んで、彼女の口に持っていく。
「サンキュ……ゲホッ! やめて、口にねじ込むな!」
「あはは。なんか殺意湧いて」
「ゲホゲホ。こっわ……! 私の親友」
涙目の島本が私から距離を離す。少しやり過ぎたかも。
「ごめ〜ん。島本様、この私めに理由をお聞かせくださいまし☆」
「コイツ……! はぁ。なりたい職業が見つかって。その為に、資格が必要なんよ」
「ほうほう。何になりたいん?」
「笑わへん?」
「笑わんよ」
「――保育士」
「ええやん。あんた、前から子ども好きやったよね」
島本が保育士か。頭の中で、子どもたちに囲まれている姿を想像してみる。めっちゃ似合うわ。
「応援するぜ、親友。私は島本が保育士になるのはぴったりだと思う。将来、私の子どももよろしくな!」
「気早すぎ! あたしたち、まだ高一やのに」
彼女がけらけらと笑う。それに私もつられた。
「あのさ、話変わるけど。最近のマクドのハッピーセット、転売行為多くてムカつく」
「それな! ちいかわのやつ、あたし欲しかったのに。一部の奴のせいで、すぐに販売終了したし。ほんま許さん」
島本も顔を顰める。
「店員さんが一生懸命作った商品を、道端に捨てるとか……お前ら、食べる資格ないって思う」
「うんうん。フードロスやし」
「だから私、ええアイデア思いついてん」
「なんや? 教えてや」
「おもちゃをなくして、パンケーキの形を――ちいかわのキャラクターにするんよ。焼印でもええ。それなら、誰も捨てへんやん?」
「でも、おもちゃはほしいわ」
「せやけど、まずは転売行為の意識を改善させなきゃ」
「そうやな。で、その手はなに?」
私が差し出す手に島本が訊く。
「授業料」
「ったく、もう。あ〜ん♡」
口を開けると、島本にポテトをねじ込まれた。
「仕返し成功☆」
満足げな表情の島本。
「ゲホッ。……ヤバイ親友や」
でも、あんたの笑顔好きやで。
