〇タイトル
【朗報】よわよわだけど健気でかわいいダンジョン配信者が最強幼女と出会って覚醒したようです
〇キャッチコピー
【全力】最強幼女(保護者付き)のダンジョン配信【見守り】
〇本文
01.なんか映った
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ダンジョンが現れてから四年。
人類は滅びを受け入れ始めていた。
最初の半年は混乱。
次の半年で徐々に謎が解き明かされた。
一般人はそれを見ているだけだった。
当然だ。命の危険がある場所に立ち入れるわけがない。しかし二年目に突入すると状況が一変する。
ふたつの情報が公表された。
スキルと、地球のタイムリミット。
ダンジョンは地球の中心部を目指して成長を続けている。しかも成長するにつれて地球のエネルギーを吸い取り、狂わせることが分かった。
まるで地球が悲鳴をあげるかのように天変地異が起きた。そして被害が拡大するにつれて、人類は半信半疑だった「タイムリミット」を信じるようになった。
要するに政府の発表は「急募、英雄」ということである。
何もしなければ全人類が滅ぶから、誰か命を懸けて救ってくれという話だ。
それから三ヵ月で十億人が死亡した。
それだけの犠牲を払って人類が得たのは、僅かばかりの情報と、恐怖だけ。
絶望が世界を侵食した。
その状況を変えたのは、配信スキルの発見だった。
ダンジョン内ではカメラが機能せず、電波も繋がらない。しかし配信スキルを使うことで外に情報を届けることができる。しかも配信スキルは「地上で」特定の条件を満たすことにより、誰でも獲得できるものだった。
配信スキルを獲得した者はプレイヤーと呼ばれ、これまで言葉や文字でしか伝えられなかったダンジョン内部の情報を次々と映像に残した。
情報は武器である。
ダンジョン攻略は飛躍的に加速した。
最前線を突き進むプレイヤー達の配信には数億人のリスナーが集まり、希望の光となった。この調子ならば破滅を回避できるかもしれないというムードが漂った。
しかし、それは最前線を走り続けた四人組が「98階層」のボスに敗れたことで打ち砕かれた。その敗北によって数十万人の自殺者が出たと言えば、どれだけ人類が絶望したのか分かるだろう。
地球の寿命は長くとも残り一年。
あの四人を「瞬殺」したボスに、一体だれが勝てるのだろうか。
無理だ。滅びは避けられない。
世界の治安は加速度的に悪化した。もはやモラルなど存在しないに等しい。シェルターの外は、古の世紀末マンガのような有り様になっていた。
それでも配信を続ける者は途絶えない。
現在、特に人気を集めているのは、カリンと名乗る日本人。
長い髪を金色に染め、一昔前に流行ったオタクに優しいギャルのような外見をした彼女は、いつも笑顔を絶やさない。
彼女は弱い。
もちろんリスナーとは比較にならない力を持っているが、彼女によるダンジョンの攻略を信じている者など一人も居ない。
それでも──
多くの人々にとって、彼女の配信は心の支えとなっている。
今日、彼女は25階層に到達した。
公式には上層、リスナー的にはチュートリアルと呼ばれる領域の終着点である。
この層を守護するボスは強い。
本来はソロで挑むような相手ではない。
:やめとけ。
:お願いだからパーティを組んでくれ。
引き留めるコメントが大量に流れる。
しかし、カリンはいつもの笑顔で言った。
『やっぱみんな無理って思う?』
肯定するコメントが流れる。
『あはは、だよね。あーしもそう思う』
:いいぞ。考え直してくれたか?
:頼む。カリンは最後の生きる希望なんだ。
次々と流れるコメントを全て読んでいるかのように、彼女はしばらく沈黙した。
やがて意を決したように顔を上げる。
『でも、だからこそ挑むよ』
コメントの数が一気に減った。
『あーしはさ、みんなの笑顔が大好きだったんだ。でもダンジョンが誕生してから、みんな笑わなくなっちゃった……特に、あの四人が負けてから』
25階層の入口付近にある安全地帯。
その場所で、彼女はまるで「別れの挨拶」のようなことを言い始めた。
『でも、あーし思ったんだ! すごく強い人が負けて絶望するならさ、すごく弱い人が勝てば、みんな元気になるかもって!』
しかし彼女は笑顔を崩さない。
『だからみんな、信じてよ』
その姿は、まるで荒れ地に咲いた一輪の花だった。
『次の英雄は、このカリンちゃんなんだってこと!』
そして彼女はダンジョンの奥へと続く道を見据えた。カメラが引き、バストアップから全身が見える映像に変わる。それはまるで、彼女が遠くへ行ってしまうかのような演出だった。
──と、そこで。
:なんだ今の。
:なんか映ったぞ?
急にコメントがざわついた。
:ちょっと待って幼女が映らなかった?
:幼女やんけ。
:いやいや、25階層だぞ?
:ロリコンども幻覚見えてて草
『ちょっと!』
カリンが声を出した。
そして映像が「その人物」を捉えた。
:マジで幼女やんけ
:どゆこと?
:途中まで親と来てはぐれたとか?
:新種のモンスターか?
:かわいい
:身長差やば
:二人並ぶとカリンに子供ができたみたいで謎のNTR感あるな
:脳が破壊されてる奴おって草
『ねぇ、待ってってば!』
カリンが幼女の背中を追いかける。
幼女はピタリと止まると、振り向いた。
配信スキルさんが空気を読み、画面をカリンの一人称視点へ切り替えた。そして愛くるしい姿がアップで映し出される。
その幼い少女はクリッとした大きな目でカリンを見て、小さな手をピンと伸ばしながら挨拶をした。
『こんにちは!』
『……えっと、はい。こんにちは』
そして人類は目撃した。
『おねえさん、だれですか!』
『あーしはカリンだよ。君の名前は?』
これまで人類が目にしたプレイヤーの中で、最も小さく、か弱い存在。
『ペコ!』
きっと誰一人として想像しなかった。
『ペコちゃん、一人?』
『そうだよ!』
『……なんで?』
『なんで?』
『……どうして、一人で、こんな場所に?』
『ダンジョン、やっつける!』
まさかこの幼女が、
人類最後の希望になるなんて──
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