新年の挨拶? もうTwitterに書きました
https://twitter.com/Kiwo_Aina4239/status/1741478456469156275と言うことでこちらに書くことはありません←失礼
そのため、惜しくもアンダーワールズ・カーズドマジックに入らなかったあるシーンをここに書き納めておこうかと思います。こいつが没になった理由は単純、一つのお話にするには短すぎ、どこかに追加するには長過ぎた。それではご覧ください
*アンダーワールズ・カーズドマジックの現在公開されている部分までのネタバレを含みます
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ダイレスは音を立てて短い階段を登り、懐かしい感じのするあのドアの前に戻ってきた。
何日会っていなかっただろうか。どんな顔して再開すればいいだろうか、普段のダイレスでは絶対に考えないような不安が頭をよぎる。不安で不安で、結局帰るのがこんな夜更けになってしまった。
「まあでも、向こうも寂しがってるだろう……」
一人呟き、ダイレスは意を決してそのドアを開けた。鉄の軋む音と共に中の光が漏れ出す。
変わらない玄関、いつも通り揃えられた靴。出迎えの気配は無い。本来ならここでただいまと言うダイレスも、今夜はなぜか言う気持ちにならなかった。
静かに靴を脱ぎ、妙に丁寧に整え、もう一回深呼吸してからリビングに続くドアを開けた。
つけっぱなしのテレビ、それを見ず、ソファに礼儀正しく座った彼女は、ダイレスの顔を見るなりゆっくりと微笑み、
「おかえりなさい」
と言った。「疲れたでしょう。ご飯、出来てますよ」
「……おお、ただいま」
そのなんとも言えない態度にダイレスは拍子抜けしてしまった。きつねにつままれた感覚でテーブルを見る。ラップされた栗ご飯……もとい、ダイレスの好物といくつかのおかずが並んでいた。
正直腹は減っている。それらを黙々と食べながらダイレスは聞いた。
「……驚かないのかよ?」
「何にですか?」
「ほら……一応、俺はテロリストに捕まって、こうやってなんとか無事に帰ってきたんだ。お前は心配もしてなかったって言うのかい?」
「あら、心配する必要がどこにあるんですか」
そう女房は手を口に当てて細やかに笑った。「何十年あなたと一緒だと思っているの。心配の前に信頼が勝つでしょう」
それを聞き、ダイレスは急に真っ赤になってしまった。「そ、そうかよ……」
羞恥心を紛らわそうと飯をかっこんでいると、彼女のシワがわずかに増えていることに気づいてしまった。髪もどこか艶が薄くなっている……
なんだよ、何が心配なんてしてないだ。メチャクチャに心配してるじゃあないか。自分のことが疎かになるくらいに心を痛めやがって。それで俺が帰ってきても弱い部分は見せないと……
それでも、彼女の穏やかな笑みは常に変わらず、男の視界に在り続けた。
……まったく。だからお前には勝てないんだ。