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二冊目の日記帳

 日記帳の二冊目を買った。
 幼少期から「おはなしをかくひとになりたい」と両親に言って憚らなかったので「じゃあ日記を書け」と言われ度々日記帳を買い与えられたものの、一度も続くことなく苦節十九年。京都散歩で丸善に行ったとき、開店して火の経った今更梶井基次郎ごっこなぞはできないと思いさてどうしようかと文具の棚を覗いているときに見かけたツバメノート百七十円也。購めてしばらく放置していたところふと思い立って日記を記したのが二〇一六年十月四日の水曜日、とある曇りの日のことである。
 それから毎日は書かなかった。四日放置してまた溜めて書いたり半月放置したことを嘆いたり二か月鞄に入れっぱなしだったりという紆余曲折を得て、その間に成人したり年を越したりしていると二〇一七年九月一日、一冊目の最終頁を書き終えた。
 日記というのは不思議なもので書けと言われたり、また新年に始めようとしたりすると全然続かないがなんでもない日にふと思い立ってマクドナルドの二階で書き始めたりするとこれが330日あまり続いたりするのである。続けるコツはただ一つ、お気に入りのノートを使うことだ。
 読み返してみると最初から最後まで「自分を変えたい」「気力が続かない」「金がない」「私は最悪だ」と鬱欝鬱欝鬱欝としていて自分が全然不変の人間であることは丸わかりである。これからも心身ともに成長しないのも丸わかりである。
 しかしながら一つの変化として「日記をつける人間になった」というのは言えるかもしれない。ここで二冊目のツバメノート百六十円也を買うとともに、作ったもののしばらく放置していたカクヨムのアカウントを動かし、近況ノートとともにずいぶん前に書いたブログの記事を有断転載するものである。
 なんでもない日にふと思い立って書いた書き物で「ものを書く人間になった」と言えるようになることを望む、とある曇りの日である。

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