本日、2023年9月8日、漫画化の寺沢武一先生が亡くなられました。
四半世紀程前から闘病生活を送りつつ作品も発表されていたのですが、とうとう……。
またひとり、偉大なクリエイターが天に召されてしまいました。
寺沢先生と言えば多くの人が思い浮かべる、左腕に光線銃(サイコガン)を仕込んだ
宇宙海賊コブラ。アニメは劇場映画やTV放映もされ、氏を代表する作品にしてキャラクターでしょう。当時は石川五右衛門の斬鉄剣と並ぶチート武器とも言われていました。なんせ精神エネルギーを撃ち出す銃なので、曲射は無論のこと追跡射撃まで可能というチートっぷり。当時はスペオペ版『ルパン三世』などともいわれておりましたが、実際、この手の"二枚目半の主人公が本気出せば作品世界最強"的な系譜は後に『CITY HUNTER』や『COWBOY BEBOP』などに連綿と受け継がれ、一大潮流を成しています。
それより何より特徴的なのはその画風で、今でこそ珍しくなくなりましたが、当時はまだレアだったアメコミ調のバタ臭い絵柄。先駆者たるタツノコ系ともまた異なるかなり西洋風に寄った絵柄は、当時流行の松下進や鈴木英人といったシャレオツ(死語)なアメリカを感じさせるイラストと共にまだ見ぬU.S.A.への憧れをかき立てたのかも知れません。♪カモンベイビーアメリカの歌詞にわかりみが深い世代ですからねー……当時の青少年的にはセクスィーなゲストヒロインのおねーたまのダイナマイトバディに悩殺されまくりだったというのも正直なところですが……(^^;
とは言え作中絶対不動のヒロイン(嫁)枠はコブラの相棒の女性サイボーグ、アーマロイド・レディ。彼女のデザインは源流を辿ればおそらくは戦前のドイツ映画『メトロポリス』のマリア(正確には人間のマリアの偽物なのでメカマリアとでも言うべきか)に行き着くであろう甲冑と人体が絶妙に融合した名デザインですね。当時の売れっ子イラストレーター長岡秀星が描くロボット美女も同様の趣があり、アニメファンにも人気でした。同氏のデザインしたメカ美女をヒロインに据えた単発OVA(『ザ・ヒューマノイド』)も出ていました。面白いことに時代を一にする二人のメカ美女の声をあてられていたのは何れも榊原良子さんで、ここでは彼女の代表キャラであるハマーン様と違った落ち着いた大人の女性になります(『ザ・ヒューマノイド』のアントワネットはやや少女寄りの感じですが)。他の作品だと『パトレイバー』の南雲警部補や『銀英伝』のフレデリカが近い感じでしょうか。
閑話休題。
寺沢先生の本邦漫画史に於ける最大の業績、或いは後代への影響は、漫画制作のデジタル化をいち早く取り入れたということに尽きるでしょう。『コブラ』の次作あたりから効果にCGを取り入れ、やがてフルCG作品も出てきました。それはもう、漫画というよりアートと言っても良いほどの緻密さで、海外での人気が高いことも頷けます。作品のほぼ全てがSF・ファンタジー系なのも特に初期のCG処理とは相性が良かったように思います。初導入機がPC-9801(!!)と何かで見たときにはビビりましたが……(( ;゚Д゚))){ド、ドーヤッタラ当時の98デ、アンナスゲー処理デキルノ!?
天国では師の手塚治虫先生やコブラの中の人の野沢那智さんと再開の杯を傾けていらっしゃることを祈りつつ……All my daydreams come tonight.