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遠く時の輪の接する処で、また。 ☆追悼・松本零士先生☆

 ――正直まだ、頭の中がうまく纏まっていません。
 去る2023年2月21日、本邦サブカル史に巨大な足跡を残してこられた漫画家、松本零士先生が旅立たれました。
 代表作を挙げれば枚挙に暇の無い程で、ざっと列挙しても『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』『クィーン・エメラルダス』『(新竹取物語)1000年女王』『ザ・コクピット』『第四畳半』シリーズ、そして言わずと知れた『宇宙戦艦ヤマト』等々。
 私の世代には漫画以上に当時のアニメブームの中心でもあり、ぼちぼち"テレビまんが"から卒業しつつあった幼気な少年少女を再びその沼へと引き摺り込んだ罪なお方でもあります(言い方^^;

 福岡は久留米出身の生粋の九州男児であり、その性格は代表作のひとつ『男おいどん』や前述の『第四畳半』シリーズに詳しいと言われますが、それらを統合・理想化すれば『999』の鉄郎や『エメラルダス』の広、やや長じて『ハーロック』のトチローになるのでしょうか。当時は鉄郎に感情移入しまくっておりましたが、この歳になるともうね、トチローがね…しかも声は富山敬さんだし…『999』で鉄郎に後を託して死ぬ場面とかもう先が判ってても涙腺崩壊ですよ実際。後に『無限軌道SSX』で若き日の元気な姿を見られたのは嬉しかったけど、我々は既に彼の未来を知っているだけにまた涙腺が……もう先生には何度泣かされたか数え切れませんです。
 そのトチローを一途に愛する女海賊エメラルダス、彼女は母性溢れる嫋やか系美女揃いの松本零士宇宙に於いては冷徹かつ強面系美女というかなり異色のキャラクターなのですが(寧ろ敵側に多いタイプ。ラフレシアとか)、各作品を読み込んでいくと実は他の面々に劣らぬ(むしろ最強クラス?)の世話焼きさんでもあることが解ります。敵側というかその他一般の有象無象に向ける容赦の無さは、裏を返せば認めた相手にはとことん尽くして下さるお方でもあるということ。但しトチローに限る、ということですな。青少年にとってメーテルは永遠のファム・ファタールであることは論を待ちませんが、伴侶として背を預けるならばエメラルダスかも――但し、自分がそれに値する男であれば、ですが(^^;

 私は世代的には『ヤマト』『999』の頃はほぼ小学生だったため、実は自身のど真ん中なのは『(新竹取物語)1000年女王』だったりするのですが……他が名作揃い過ぎてファンからの評価も今ひとつという感のある作品ではありますが、TV版冒頭のミステリアスな導入部とか、1000年ひと昔というスケールの大きさ、関東平野を宇宙に飛ばしてしまう奇想と、これはこれで松本零士らしいセンス・オブ・ワンダーに溢れています。後に各作品の裏設定がリンクされたことにより、松本零士宇宙の大きな起点のひとつにもなった重要作でもありますね。TV版と劇場版で設定がガラッと変わったのはかなり衝撃的でしたが(^^;
 当時は頑張ってサントラLPを買いました。主題歌は双方とも名曲。劇場版の歌手デラ・セダカ嬢は『Ζガンダム』主題歌の作曲者でもあるアメリカン・ポップス界の大御所ニール・セダカの娘さんでもあります。TV版の主題歌・劇伴を担当した宇崎竜童は後に担当した『仮面ライダーBlack』の主題歌を彷彿とさせる疾走感のあるサスペンスフルな曲調で、特にOPは時々カラオケで歌いたくなる……。劇場版の劇伴は当時NHKのドキュメンタリー『シルクロード』で大ブレイク中の喜多郎。神秘的で静謐な曲調は彼の持ち味でもあるシンセサイザーの響きとも相俟って神秘の遊星ラーメタルの雰囲気を良く醸し出しておりました。
 尚、後にDVD-BOXが発売された際には速攻で予約しましたよ、既にLD-BOX持ってたのに。何故かって? それは特典に当時は単品(※)では未CD化のサントラCDが付いていたから……(←馬鹿) ※『松本零士 音楽大全』なる完全限定生産10枚組CD-BOX(5万円!)に収録されたのが初CD化のようです。

 後に漫画を読み込むようになってから、独特のアナクロニズム溢れるメカデザイン、未来的なのに有機的な描線、そして誰もが大好き松本メーター!!に魅了される訳ですが――特に戦記漫画の実機の描写などは今でも追随を許さぬほどの官能性がありますね。この域に達したのって他には望月三起也先生か、お弟子さんのヤッタラ……もとい新谷かおる先生くらいかも。兎に角、先生のフィルターを通して見るメカの数々は実物より美しいと言っても過言ではありませぬ。俺のメッサーがこんなに可愛いわけがない!!(混乱)

 世界的にブームとなった『STAR WARS』が本邦でも変わらずブームとなった背景には、松本零士の諸作品が地均しを務めたという布石も大きかったのではないかと思う今日この頃――宇宙に思いを馳せ、夢はいつか遠く時の輪の接するアルカディアで再会の「ゴーラム!!」を挙げんことを。(※全然纏まって無い件)

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