どうもHaluです。
改訂版書けました。
書けましたが…………
あまりにも設定が違いすぎる!
ほぼ別!でもまぁいいかなって!
いや世界観は同じなんですけど……主人公の性格がもうすっごい変わってますね。なんだかんだ書いたことのないタイプの性格にはなってます。
それにまだ試作段階ですが、ちょっと載せておきます。
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『カデリア・クロニクル』
舞台は剣と魔法の世界。はるか昔に魔王が現れ、1人の勇者が見事に打ち倒したという伝説が残る異世界。その世界のカデリア王国という大国には世界有数の学園「カデリア魔法学園」が存在する。15歳から入学を許可され、様々なことを学ぶことが出来る。剣や魔法は勿論の事、商いや鍛冶。医療や勉学。何を学ぶのも自由。
そのカデリア魔法学園に通い、数多の苦悩をヒロイン達と乗り越えてカデリア王国の歴史に名を刻む人物となる事を目標とした男性向けの恋愛ゲーム。それが『カデリア・クロニクル』なのである。
そのゲームにおける主人公のライバルであり、力に溺れて闇堕ちラスボスになる悪役の名前は『ギルバート・ヴァーミリオン』。ゲーム中でも嫌というほど見てきた悪い奴。燃えるような赤い髪に恵まれた肉体と才能。逆らう者は全て力で捩じ伏せる最強の男である。
何故主人公ではなく悪役の説明をしたのかと言うとその理由は単純明快。それが今の俺の現状を表すのに最も適しているからだ。
何度部屋の鏡で確認してもゲームで見た顔と同じ。真っ赤な髪に鋭い目付き。何か訓練をしたわけではないのにバッキバキの肉体。体の奥底から溢れだそうとしている魔力の奔流。
何度も頬をつねり、痛みを感じることで俺はようやく確信することが出来た。どういう理屈かは分からないが俺はギルバートの意識を奪う形でこの世界に転生した異世界転生者というわけだ。
「でもよりにもよってギルバートかぁ……」
俺しかいない部屋で溜め息混じりにそう呟いた。前世ではオタク大学生に過ぎなかった俺はバイト帰りに交通事故にあった。まだまだやりたいことは沢山あったのにと意識を失い、目が覚めたら知らない天井だった。初めは助かったのかと思ったがすぐに自分の体ではないことに気づき、部屋の窓から見える外の景色や自分から発せられる声。そして壁に立て掛けてある紺色のフィクションでしか見ないタイプのお洒落な制服。それらのせいで早めに夢なのだという結論には至り、今こうしてある意味では現実なのだと実感した。
ゲームの世界に転生した……となれば本当は嬉しい事なのだろうが、本音を言うなら主人公がよかった。どうしてギルバートなんだ。
ギルバート・ヴァーミリオン現在15歳。カデリア魔法学園に首席で入学し、入学から1ヶ月で好き放題に振る舞っている不良みたいなもんだ。本来は二人部屋であるはずの寮の部屋から同居人を脅して退学までさせ、悠々自適に暮らしている。
その他諸々の日頃の行いのせいで勇者科の生徒からの評判は最悪。どうやらシナリオ通りにラスボス目掛けて一直線のようだ。
「どうしよっかなぁ……」
俺は一度ベッドに戻って仰向けに寝転がった。色んな事を確認していたせいで一限目の授業の開始時刻はとっくに過ぎており、サボることに決めていた。今は授業なんて受けている場合ではないし、勇者科の面々としても俺がいない方が嬉しいだろう。いっそのこと他の学科に……
「………っ!そうだ!」
周りから煙たがられてる事実に少しナイーブになり、これからのギルバートとしての人生をどう生きようかと悩んでいると俺はとんでもないことを思い付いた。その瞬間にいてもたってもいられなくなり、俺は急いで制服を着て部屋を飛び出した。
ちなみに、勇者「科」と言うだけあってこのカデリア魔法学園には合わせて3つの学科がある。ゲームでは主に勇者科で話が進むが、他の学科のヒロインもいるからハーレムルートを目指すなら大事な話だ。
1つ目は勇者科。
伝説の勇者になぞらえてそう名付けられた学科。主に戦闘や魔法の心得を学ぶことが出来き、入学者数が一番多い。主人公のルークやギルバートはここだ。
2つ目は商業科。
その名の通り商い全般の知識を学ぶことが出来る。この学科では鍛冶や薬学、料理に芸能など幅広い学問がある。ヒロインの1人はここにいる。
3つ目は研究科。
魔法や伝説の勇者の時代の研究を主とする学科。サブクエを依頼してくる奴らは大体研究科の奴らだ。受けなくてもいいクエストばかりだが、とある人物のクエストを最後までクリアすると素晴らしい報酬がある。
そしてその素晴らしい報酬こそが俺が興奮して廊下を駆けることになっている原因の品だ。
向かう先は研究科の本館。周回する度にお世話になっていたから場所は覚えている。いつも俯瞰視点で見てた間取りを走っているのはとても不思議な気分だが、よりあのゲームの世界なのだと感じられて嬉しくなってしまう。
「……ここだ」
そうして訪れたのはとある研究室。立て掛けてある表札を確認し、部屋の中にいることを確認する。本来のゲームならここにいる人物から受けられるサブクエが発生するのは入学から3ヶ月後。
だがしかし!ここはもうゲームの世界であってゲームそのものではない!プレイヤーを縛る鎖はないのだ!それに俺には門前払いをされないだけの知識もある!一番心配なのはコミュ力だが……まぁなるようになれ!
「……し、失礼します」
部屋の扉をノックし、声をかけた。そのまましばらく待ってみると中から気だるげな女子の声が聞こえてきた。
「なんスかー。今忙しいんスけどー」
「ぉふ………」
思わず気持ち悪い声が出てしまった。だが言い訳させてほしい。扉の向こうから推し声優の声がする。しかも聞いたことない台詞を話してくれる。こんな幸福があっていいのだろうか。いやない!
「あの………俺、先輩にどうしても聞いてほしい話があって……はい!」
「…………どうしても?」
興奮を抑えながら門前払いをされないように交渉を続ける。すると部屋の扉が開き、中からズボラを体現したかのようなジャージ姿の女子が扉の隙間から顔を出してきた。のだが……
「お断りっス」
「ちょっ!?」
そのまま話くらい聞いてくれるかと思ったが、女子は俺の顔を見るなりすぐに扉を閉めようとした。俺は反射的に扉を掴み、閉められないようにと全力で抗った。
「やめるっス!君の噂は聞いてるっス!不良の悪事に加担するつもりはサラサラないっス!」
「悪事とかじゃないんです!お願いですから話だけでも!」
「いやっス!警備員を呼ぶっスよ!」
どうやらギルバートの悪評は既に研究科まで届いているようだ。推しの声で罵倒されるのもいいがそろそろ警備員を呼ばれる。こうなったら一か八か直球勝負だ。
「『アレックス』!」
「っ!!?」
その名を口にした瞬間、女子は驚いた顔をしてドアノブから手を離した。どうやら賭けは成功したようだ。
「どうして……君がその名前を………」
「……俺も興味があるからです」
「………入るっス」
複雑そうな顔をした女子に部屋へと案内される。部屋の中はとっ散らかっていて、足の踏み場がない。お世辞にも広い部屋とは言えないが個人の研究室を持ってるというのはそれだけ彼女が天才で期待されいてることの表れだ。
名前はリリー・アクスレイ。ギルバートの1つ上の16歳。紫色のボサボサの髪に全身ジャージのようなズボラな服装。運動不足なのかムチムチしてる。だかゲーム中ではなんと攻略対象ではない。
研究科に所属する大天才だが……授業にろくに出てないため単位が不足気味。そこまでして研究しているのは主に勇者の時代の遺物。それの解析と復元をテーマに取り組んでいる彼女から依頼されるはずのサブクエスト。それが俺の目的でもある。
「一体どこでその名前を?」
「えっと……古い文献で見ました」
「なるほど。噂や見た目に似合わず歴史が好きなんスね」
リリーは俺に疑うような視線を向けつつ椅子に座り、物で溢れかえっているデスクの上の資料を片付け始めた。そりゃ昨日まで悪者でしかなかった奴からそんなことを言われても信じられないだろう。今だって例の名前を出したから部屋に通されただけだ。
俺に人を絆すほどのコミュ力はない。ないがここで引き下がりたくもない。となれば手段は真正面からの交渉しかない。
「俺も見たいんです。本物のアレックスを」
「………分かったっス。その目に嘘は無さそうだし、ウチとしてもいつかは勇者科の誰かに声をかける気ではあったっスから」
「じゃ、じゃあ!」
リリーはデスクの引き出しからとあるプリントの束を取り出して俺に手渡してきた。俺がすぐに目を通すとそこにはあまりのカッコ良さに全ての周回で手に入れたスーツの設計図が描かれていた。
剣と魔法の世界にはそぐわないあまりにも機械的すぎる見た目。書いてある説明や詳細はまるで意味が分からないがカッコいいということだけは伝わってくる。
俺がプリントを隅々まで眺めていると、リリーは肩の力が抜けたような溜め息をついて椅子の背もたれに体を預け、どこか嬉しそうに語り始めた。
「『完全武装人型装甲《フルアーマースーツ》アレックス』現代の技術では再現することは出来ないと言われてるっス。その主な理由は――」
「使われてる素材………とそれを形にする技術ですよね」
「…………その通りっス。どうやら歴史好きなのは本当っぽいスね」
本来のゲーム流れでは戦闘能力がないリリーの代わりに主人公が複数のダンジョンに潜って大量の素材を集めてくるといったものだ。だがそのダンジョン達は所謂隠しダンジョンというやつばかりで発見することすら難しい。ストーリー進行のついでにやるタイプのサブクエだ。
だが!それは初見の話であって全てのヒロインを攻略する過程でこのクエストを毎回クリアしていた俺に死角はない!どう回れば効率が良いかまで頭に入っている!それにギルバートの体なら今の段階でもモンスターと戦えるはず……ギルバートとして交渉するならそこをアピールするしかない!
「俺が素材を集めてきます」
「いや集めてくるって、実在するかどうかも分からない素材ばかりっスよ?」
「大丈夫です。知っ……歴史好きなんで!」
「なるほど…………ふむっ……」
端から見れば根拠のない俺の言葉にリリーは段々と貧乏揺すりの激しさが増し、興奮を抑えきれなくなっていくのが伝わってきた。そして何かの結論にたどり着いたのか足の動きを止めると、その紫色色の瞳を子供のように輝かせて勢い良く椅子から立ち上がった。
「乗ったっス!君のその熱意……賭けるに値するっス!このアレックスの良さが分かる人に悪い奴はいないっス!だからウチも本気には本気で応えるっスよ!」
「っ…!ありがとうございます!」
こうして俺はリリーとの交渉に無事成功し、すぐに素材集めのためのダンジョン巡りを始めることにしたのだった。