• 異世界ファンタジー

追悼・巨星小澤征爾起つ

 長野五輪開幕式のブルーインパルスの逸話を、絶えず思い出す。彼のタクトは秒単位で正確であり、演奏終了のタクトに合わせてさらに大きなペイントを施した。

 N響だったか、90を超えたジョン・ウィリアムスが指揮を終えたとき、娘さんかと記憶しているが、車椅子に押されながらもそこに座した巨星は、あの金色に楽聖の煌めきを宿した瞳を向けながら、抱擁しあった時は涙が滝になった。

 日本を飛び出して中国の楽団を率いた時から、絶えず彼にあったのは音楽への熱情ただこれ一点のみである。
 彼はたとい魂帰天するも、その手には、賛美を不変不逆奏で足り得るタクトが絶えず握り締められ、御使や芸術の神々が坐するハーモニーの楽団を引導するのである。

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