初夏の頃だったか、わたしの友人が書いている小説を見せてもらいました。
本人いわく、自分自身の書き物に対してかなり酷評でした。
ハルさんのもののようにならない、と。
そう、以前わたしの小説をどうしてか、……と言っては本人に失礼ですが、どうしてかやたらと好きでいてくれる友人です。
わたしに見せるのはかなり気が引けたと言っていましたが、確かに、わたしの使う表現によく似た書きっぷりで。
それはそれは、幸せな気持ちになりました。
だから、「いつかの、偽りの夜」を書きました。
これは原作者である友人への感謝と、敬意の表れです。
かなり速いテンポでとんとんと終わりへ向かっていく、冬島と風間。
彼らをいわば「わたしらしさ」を押し出して、描いてみたかったんです。
憧れとは大変恐縮ですが、少なくともわたしの言葉をもって、背中を後押ししてあげるのはけして悪いことではないだろう、と。
がっつり本人からイメージを聞いて、わたしなりにあった矛盾を解消し、こっそりと。
公開したとき、とても喜んでくれました。
友人は、二人がここにいる、と喜んでくれました。
やはり、書くというのはこうでないと、と強く思ったものです。
また、思いのほか楽しかったんですよね。
なんとか書き上げねば、と思ってエンジンを吹かしたのは事実ですが、わたしは冬島の決断も、風間の葛藤も、彼ららしいと思えて、とても満足の行くものとなりました。
悪い評価をいただく前に、読者は離れていくだろうと思っていますが。
仮に悪い評価をもらったとしても、劣等感の強いわたしはそれを見ることはないでしょう。
これからも好きに描いていきたい。
そう思える友人からの素敵なプレゼントでした。