インターネットニュースの書評で、カクヨムに掲載されている「AAゴールデンエイジ」のことを知り、読ませてもらいにいきました。
ライトノベル風な語り調だけど、文章の構成はかなり明確で流れに澱みがなく、シンプルにまとめているけれど、意図する意味はちゃんと伝わっていると感じました。私は文語体も嫌いではないけれど、こういう口語体もいいなぁ〜と正直思いました。とにかく、新鮮です。
初読・通読で、印象に残った点は2つ。
1. 世界の経済を成り立たせている近現代資本主義の構図もしくは要素を「異なる価値観の差から、利益を取り出している」としていて、現代は「過去/現在と未来の、価値観の差」から利益を取り出していると述べている点。「既存の技術の効率化によって、最小・最低限の利益を取り出す」か、「革新的技術によって、より大きな利益を取り出す」。民間の大企業と中企業の両方で働いた経験から、中小は前者、大は後者と、既に「棲み分け」が出来ていて、これによって生じる「格差」は既に「既定路線になっている」のではないかという思いにつながっていきました。
2. 仮想の愛子帝と芦田首相のやりとりの「背後」に垣間見る、2050年の日本未来予想図。近現代的デモクラシーと違う、社会構造のようですが、混沌と透明感という2つの相矛盾するものが混在しているような社会。作者がいうところの「良くするのではなく、これ以上、悪くならないよう対処する」ことを受け入れた社会。「基礎研究がなくなり、実学を優先する」ことで、社会は「土台をなくした”上もの”だけとなり、その上ものに上ものを重ねていくしかなくなっているゆえに、実は、実体がない、脆弱なシステムに成り下がっている」のではないかと、一人想像してしまいました。
結構、考えさせてくれる小説でした。