アトラの見た夢の内容を、人間の頃にアトラが迎えた最期へと変更しました。
アトラが『対魔女戦』の最後に沈黙させられる直前に放った「おとうさん」という言葉は、アトラの人間の頃の最期に叫んだ言葉であり、理不尽な暴力により蹂躙されるという共通の状況から、人間の名残が表出した言葉でした。
なので、変更後の夢の方が絶対良いだろうと考え、今回の変更を致しました。
既読の方は下記変更前後の比較だけでもお読み下さい。
【旧】
川だ。
オレは、暗い川の中にいる。
川底から生じた泡のひとつ。それがオレという命そのものだった。
多くの命があった。共に生じ、急速に浮上し、水面で弾けて死を迎える。
夢なんだと思った。
いや、実際に今もそう確信している。
浮上する。周りのみんなと違って、それはゆっくりと、あまりにも緩慢に。
みんなが弾けるのを、浮上する中でいくつも見つめた。
たくさんの死。けれど、みんな同じなら怖くない。
怖いのは、オレはみんなと違ってあまりにもゆっくりと浮上していること。
オレという泡だけ、みんなと違う。それが、それだけが怖い。
そうして、1人になっていた。
一緒に生じたみんなはもう弾けて消えた。
後から来たみんなも、さっき弾けて消えた。
もう、誰もいない。ゆっくり、ゆっくりと浮上する。
オレの"死"へと、ゆっくり、ゆっくり。
そうして水面から顔を出した。
泡は弾けない。
オレだけ、みんなと同じところにいけない。
そうしてただただ広がる闇の中、たったオレだけが残されていた。
【新】
ドムッ、と……自分の身体が鳴らした音を聞いた。
背中を固くて、感じたことのないほど冷たいものが乱暴に擦ったのかと思った。
けど……直後の焼かれるような感覚と、そんな感覚すら切り裂いて脊髄を割る激痛に、いやでも何をされたのか理解する。
背中の灼熱の感覚とは対照的に、全身は血の気の引いた、凍えるような寒さで震えて————
いや——痙攣している、のか。
「があ、ギぁっあああぁあぁあ‼︎‼︎‼︎‼︎」
叫びをあげる間にも、異物が容赦なく入り込み、体の中身を押し分ける。痛くて、熱くて、怖くて……全身からの苦痛を口から吐いたような声が止まらなかった。
自分のものとは思えない、人間というケモノの断末魔。
「ひっでェもんだなァおい」
「ぁ、ぁアト……ら……」
真っ青な顔でガチガチと歯を鳴らすのは、◼️◼️◼️だ。
背後の男は、そんな◼️◼️◼️を人質にしていた。だから、動けなかった。
「ひどすぎるよなァ」
「ぁ、……ぁぁ……ぁぐっ⁈」
「てめぇのことだァ、ガキ」
やめろと、頭の中の自分が叫ぶ。
もう起きたこと。覆せない過ぎ去った過去。
それでも、いや、だからこそ。
男が何をしようとしているか、分かってしまう。
「俺はなあ、ガキ。仲間を見捨てるヤツがいッちばん気に入らねえんだよ」
「…………ぇ?」
この男に、◼️◼️◼️を助けるつもりなんてなかったんだ。
「ふッ……ざげるなあ゛ッッ‼︎ やぐぞぐ——ゲッハ! だずげる゛っでえ゛、ごふッ、ぃ゛っだぁあ゛あ゛あ゛あ゛ッッ‼︎‼︎」
初めから殺す気だった。何か理由をつけて済ませる気だった。
「仲間が命ィはってるのを何とも思わねぇのか⁈ このクソがァア‼︎‼︎」
「あ゛————ぇ…………?」
振り下ろされた。
何の躊躇もなく。
声とは裏腹に、なんの怒りもない顔で。
喜色すら浮かんだ顔で。
「カフッ! ぃ……た……」
◼️◼️◼️の赤い赤い大切な暖かな生命が漏れ出す溢れ出す零れ落ちていく。
そうして冷たくなって、ぼくはただ1人残された。こんな怖い場所に置いて行かれて、恐ろしい顔に囲まれて。
「や……て……」
割れる音を《《中》》から聞いた。
死んだって守るのに、もうそんな英雄ごっこをさせてくれる◼️◼️◼️すらいなくなった。
「…………けて……」
勇気も怒りも上手に剥ぎ取られて毟り取られて踏みつぶされて、剥き出しの"子ども"のぼくが引き摺り出される。
こわい怖いいたいことやめてごめんなさいもうしません良い子にいい子に死にますから————
だから、子どものぼくは叫ぶしかなかった。
「たずげでえ゛! お父さ゛あ゛ぁあ゛————!!」
硬い頭蓋の割れる音。
それが最後の音だった。
心はとっくに屈してて、やっともらえた|良い子のご褒美《終わり》を前にして、キャッキャッキャッとはしゃいでた————————