無《む》
無《むむ》
「ねえ」
無《むむむ》
無《なるほど》
「ねえ」
無《ふむふむ…》
「ねーえー」
無《まだいけるか》
「ねえってばー」
無《まだ余裕っぽい》
「おーい」
無《案外いけるもんだ》
「聞こえてる-?」
無《九文字でもいける?》
「ねーってばーーー」
無《すげえ、いけるじゃん》
「ちょっと!!」
無《うるせえ!! こっちはいまルビの最大文字数調査で忙しいんだよ!!》
「あ、あう……」
無《すごいなこれ。一個前の32文字だぞ……。いったい何を想定してこの文字数のルビを許可してるんだ……》
「あのさ」
無《ん?》
「ルビのことだけど」
無《?》
「カクヨム記法の詳細に《《親文字は最大20文字まで、ルビ文字は最大50文字まで設定できます。》》って書いてある……よ?」
無《カクヨム記法……? なんだそれは……この世界の真実を記した魔術書か……?》
「いや、普通の詳細なんだけど……」
そう言ってはにかみながら俯く少女は、この世界に転生した俺に何かと優しくしてくれる謎の少女Aだ。名前はまだない。
「え、ちょっと、ひどいよ! 名前ちゃんとあるよ!? 苗字はく
無《あ、名前とかそういうのいいから》
「ひどいくない!? っていうかそろそろ普通に話してよ……」
「| 《ったく、さっきから注文が多いな。ほら、どうだ? これで満足か?》」
「!? なにそれ!? 声出してないのに言葉が聞こえるんだけど!?」
「| 《聞こえますか? 聞こえますか? いま、あなたの脳内に直接語りかけています。》」
「やめてよ! 怖いよ! 絶対おかしいよ!」
「| 《ファミチキください!》」
「……ファミチキってなーに?」
「ああ、この世界には無いんだっけ」
思わずため息が出る。
そう。
ここは俺の生まれ育った地球でも、日本でも、東京でも、もちろん蒲田でもない。
俗に言う異世界ってやつだ。
ほら、みんな知ってるだろ? 死んだら行ける世界のことだ。
「それって普通、天国じゃない?」
「異世界なのに天国の概念は同じなのか……」
「ほら、その辺は適当に、ね?」
「雑すぎるでしょ設定」
「だって、そんなこと言ったら“からあげ”とかどうするの? この世界には“唐”が無いんだから、“からあげ”って名前はおかしくない?」
「確かに……っていやいやいや、なんでこの世界で生まれたお前がからあげを知ってるんだよ!?」
「オー、ワタシ、ニホンゴ、サッパリネー」
「お前絶対日本から来ただろ……」
「そんなことより、ちゃんと話せるじゃん!」
「いや、カクヨム記法飽きた。疲れた」
「まったくもー」
そう言ってA子(仮名)は楽しそうにクツクツと笑う。
表情がころころと変わるのは見ていて飽きないし、顔の作りも悪くない。と、思う。
「なんでそこだけ歯切れが悪いんですかー!」
「いや、その前に、モノローグにいきなり突っ込んでくるのやめろよ」
「えー」
「えーじゃない」
「B-」
「いや、悪かった。お前は謎の少女Aだ」
「だーかーらー! わたしにはちゃんと名前が」
「あーはいはい、そうだなA子(仮名)」
「うー」
ふむん。口を尖らす表情もいい感じだ。
ぜひそのうちに泣かせたいと思う。
……と。
「与太話はこの辺にして、何の用だ?」
「よくぞ聞いてくれました!」
えへん。と、無い胸を張るA子。
胸のサイズもA子。
強く生きろA子。
「さっきから悪意のある視線を感じるのですが……」
「そんなことないから続けて続けて」
納得いかなそうな顔をしながらも、
こほん。と一度咳払いをして
「そもそも、今回のタイトルですよ!!」
「タイトル……?」
「とぼけないでくださいよ! ほら、この前も叫んでたじゃないですか!
『予約投稿が**時00分「丁度」にしか投稿できないってどういうことだよ!!!』
って」
「あー」
「思い出してくれましたか? そう。実は何を隠そう、わたしの能力名は《予約投稿《約束された世界の契り》》なんです!」
「約束と契りって意味被ってない?」
「そんなの今はどうでもいいじゃないですか!」
ぷんぷんと頬を膨らませるA子。
胸も膨らむといいなA子……。
一回ここまで書いたんだけど、前ボツしたよ。
いつかA子に光を与えてあげたいよ。
全部フィクションだよ。安心。