人生には必ず困難な時が訪れます。
自らが原因で招くこともあれば、不可抗力や運命に導かれる場合もあります。
主人公「ベンタこと東弁太一(とうべんたかかず)」と、もう一人の主人公、「分銅海斗(ぶんどうかいと)」。親を失うという自分の力ではどうする事も出来ない人生の困難に、「ベンタ」と「海斗」は遭遇します。
『自分の力で、自分の人生を切り開きたい』、プロボクシングに人生をかける決心をします。
入門から半年、村木コーチの厳しい言葉に反発し、練習を勝手に変更してジムを飛び出したベンタ。
海斗はベンタを追いかけ、公園にいるベンタを見つけました。
ベンタは、海斗も自分と同じようにつらい思い出や境遇、先の見えない不安と戦っていることを知ります。(ここまで第一章)ここからの続き……。
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前回のつづき、
<新人プロテスト前日 ジムでの練習>
会長の徳川や、マネージャーの田口、OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級チャンピオンの田上 瞬が見守る中、ベンタが先輩の矢尾板と、海斗が先輩小島を相手にしてスパーで基本的な動きの最終確認をしていました。 ここから以下は、【テイルズ】で公開中の、「ベンタ」本文でお楽しみください。
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トレーナーの村木が、ベンタと海斗の二人に何回も言い聞かせていた。
「2ラウンドある」「自分の技量を見せればいいんだ」
村木が海斗を見た。
「いいか、あくまでテストだ」
田口がベンタを見た。
「相手を倒すことが目的じゃないぞ!」「はい」 ベンタと海斗、二人が同時に返事をした。
「ジャブ、ストレート、ワンツー、ディフェンス、フットワーク、そして手数だ」
村木がベンタを見た。
「その中でも特に大切なのは、ディフェンスとストレートだ」 村木が海斗を見た。
「接近してフックなんか打ったって、意味がないからな!」「はい」 二人がまたまた同時に返事をした。
「村木、この二人は、大丈夫だ」
徳川が村木を見ながら、ににこやかな顔で云った。
「まともにパンチが当たったら相手が立ってられないよ」
田口がベンタと海斗のパンチの威力を十分に認識していた。
「田口さん、それだからこそ敢えて言ってるんですよ」
村木が真剣な表情で答えた。
そして、
「テストにならないんじゃないか、ってね。逆に心配してるんですよ」
村木が力を込めて率直な意見を述べた。
横で聞いていた徳川と田上が、苦笑いを浮かべながら、なるほどね! という顔をした。
「明日の朝は一旦ジムに集合して、持ち物や書類の準備をしてから出発する。
田口さんが最後まで付き添ってくれるから、安心して今までの努力の成果を出してくれ。いろんな選手が来るから会場の雰囲気に飲まれるなよ」
村木が最後にニコリと笑った。
「今日はこれで切り上げる。早く帰ってゆっくり休むんだぞ」
村木が優しい眼差しで、ベンタと海斗の二人を見た。
なんとか無事に日程をこなし、明日の新人テストの最終調整が終了した。
二人の体調は万全だった。
東弁太一(とうべんたかかず)と分銅海斗(ぶんどうかいと)、ともに十六歳。
プロボクサーを目指し上京した二人の運命を決めるプロテストは、明日に迫っていた。
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次回からは、いよいよ、第三章に突入します 。
本格的なボクシングのシーンが、登場します。
お楽しみに・・・。
生活や人生が思うようにいかなくて苦しい時、つらい時、どん底だと感じるとき、人は現実とどう向き合えばいいのでしょうか? どう立ち直ればいいのでしょうか?
野﨑博之(のさきひろし)の「呼び止めざる事の為に」の本の中に、 阪神淡路大震災に寄せた、「道標」という作品が所収されています。 この「ベンタ」という小説に、「道標」作品の思いが込められています。連載中、【ベンタ】をお楽しみください!
野﨑博之(のさきひろし)
