このたびは『魔法少女と魔法少女と、俺( https://kakuyomu.jp/works/16817330650242312254 )』を読んでくださり、ありがとうございました。
本編完成から2週間が経ったので、当作品についての後記みたいなものをお出しします。作品を読んで面白かったと思ってくださった方向けの蛇足テキストです。
当然のように本編のネタバレが入っていますので、未読の方は今すぐ本編を読んでください。絶対に読んでください。絶対に……
◆ 単語について
『霊力』と『魔力』は事実上同種のエネルギーであるが、魔力の存在がまだ不明瞭だった頃に、魔法少女や魔物の力として『魔力』という名前が付けられ、以後その名称が引き継がれている。
『霊能』は霊力を用いた常人の持たない特殊能力を総称する言葉。魔法少女の『魔法』や『力』、ダダさんの『妖術』は、すべて霊能の下位カテゴリーにあたる。
魔法少女に『魔法少女』という名を付けたのは幸坂星良。優羽陽は何の躊躇もなく『プリキュア』と呼称し、祈月に『キュアムーン』と名前を付けようとして、星良に叱られた。
本来の名称は別にあるのだが、少なくとも現時点では、地球人がそれを知るすべはない。
知性ある人型の魔物=魔界の嫡主たちの言葉は、魔法の力で現地(日本)の言葉に翻訳されている。
現地の生命体から感情を集めるという目的がある以上、コミュニケーション手段を獲得した方が都合が良いのである。
『感生計画』の名称は感生伝説から引用された。感生伝説とは、特異な能力を持つ人物が、通常ならざる手段で懐妊・出生したという伝説の類型。
計画関係者の予見した『来たるべき霊的破滅』は『恐怖王』の到来のことであったと局長は結論付けているが、魔法少女の力なくして計画関係者がそれを止められた可能性はきわめて低い(ゼロではない)。
◆ 主要人物追記
・天道到理
対霊攻撃・対霊防御・対霊感知全てに秀でた完成型霊能力者。溢れ出る霊力は武装への対霊攻撃力付与すら実現する、『感生計画』の最大成果、とみなされていた。
『計画』内でも、他の披験体に比べれば良い待遇を受けていたのだが、根本的に人間扱いをされておらず、また直後に出現した魔法少女との圧倒的なスペック差により、客観的には自分が優秀だと理解しつつも、感覚的には自分を優秀だと思っていない。
無訓練の時代から、人には見えないものが見えるくらいの能力はあり、現在も並の悪霊を単身無手無呼吸(外部の支援や特別な道具・呪文なし)で祓うことくらいは当然にできる。魔法少女の力は対魔物に特化しているため、悪意を持って自身の存在を隠す悪霊を見つけ出すことは困難で、その点においては到理の方が優れている。
・漣優羽陽
家族構成は両親と大学生の兄。少し手狭な一軒家暮らし。家族仲は良好で、しばしば家族揃って映画を見ることがある。一時期兄妹の間で『これから見る映画に濡れ場があるかどうかゲーム』が流行したことがあり、それが長じて、映画の濡れ場の有無を作品のあらすじから見抜く技術を持っている。作中、『バススピード』に対して『これなら良い』『ごはん中でも大丈夫』と述べたのは、その辺りに由来する。
優羽陽という自分の名前は好き。だけどどっちかというと『勇羽陽』の方が強そうで良かったなーと常々思っている。
・甘美夜祈月
家族構成は父のみ。二人で住むには少し広いマンション暮らし。父親は商社に務めており、仕事熱心。父親は漣家に対して、しばしば祈月を構ってもらっていることに深く感謝しているが、一方で漣家の息子(優羽陽の兄)が祈月にただならぬ下心を持っていないかを疑い、探偵に調査させたことがある。
祈月という自分の名前は、苗字と合わせて少し『やりすぎ』だと密かに思っている。由来は、死産の可能性を告げられた父親が一晩眠らず夜の満月に母子の無事を祈り続けたことから。
・天道花織子
『計画』に学校への登校を許されていた間も、漫然と学生生活を送ることは許されず、たとえば学内の任意の対象と意図して親しくなったり、狙ったカップルを別れさせたりといった訓練を日常的に課されていた。
その前歴から、友情や愛情といった人間関係の充足にあまり価値を見出さず、それらを捨ててでも『役立つ』『選ばれる』ことに強い意義を見出しており、長じて比較的誰にでもできる到理の世話役は非常にストレスフルなポジションだった。
他方で、そんな花織子も到理の世話を見ることそのものについては(『訓練室』を設けるなど悪質な仕掛けをすることはあっても)そこまで嫌ってはいなかった。他ならぬ到理に嫉妬しつつも、その到理から感謝されることにはそこそこの満足感を感じていたのである。
いっとき到理を強引に抱こうと空想レベルの計画を立てていたことがあったが、当然これは未遂に終わっている。
・局長(渚紗瞳美)
偉そうな立場にいる割に、結構ポカをしでかしている。マクロな部分では非常に良く働いているのだが、ミクロな部分では甘さ(人への優しさ、見通しの粗さ)が悪く働きがち。
視野の広さ、視座の高さはやはり来歴による所が大きいので、直属に人事コンサルタントでも置けば状況は改善されるかもしれない。彼女自身、そういった手段に気付くのは難しいかもしれないが……
・幸坂星良
三人の魔法少女のリーダーであり、一番最初に魔法少女になった、いわば主人公ポジションと言うべき少女である。
多少の主人公補正をものともしない『恐怖王』に当たることになってしまったのは不幸としか言いようがないし、かと言って星良ではなく優羽陽が先に犠牲になっていたところで星良に『恐怖王』を打倒するウルトラCは起こせなかったので、本当に救いようがない。
◆ 舞台設定・2022年東京
当初はコロナ禍下の物語にしよう、そういった描写を盛り込もう、という気分で始めた設定であったが、とにかく『顔の下半分がマスクで隠れている』状態での文章描写が非常にキツく……というよりは慣れておらず、結局早々に断念した。
マスクをした人物を描写することは不可能ではないが、その状態で恋愛モノとして好感度高く描写を仕上げるのは、少し試したが本当に難しい。ずっとマスク姿しか知らなかった相手のマスクの下を見るドキドキ、みたいなものもあるのかもしれないが、今作はそれを描写するのにも適さなかったため、早々に排除した。
ともかく、この世界では新型コロナウィルスの世界的流行は発生していない。その裏には、案外局長辺りが関わっている可能性がある。
◆ 恐怖王
知っている方は察しがつくだろうが、恐怖王は『異修羅』の『本物の魔王』より着想を得て生まれた存在。
言うまでもなく能力者としての純度はあちらの方が高く、また(恐らくではあるが)優羽陽の能力では本物の魔王に対抗することはできない。
◆ 語り手としての漣優羽陽
終盤明かされる彼女の秘密とこれまでの優羽陽の振舞いについては、矛盾が発生しないよう序盤から注意深く描写している。
到理から見た優羽陽の表向きの発言には、彼女なりの虚偽が混じっている可能性を踏まえれば、優羽陽は決して『信頼できない語り手』ではなく、また彼女の秘密の『相手』も断定しきれない書き方に調整してある。
◆ 甘美夜祈月と恋愛ドラマ
祈月は結構テレビっ子で、地上波テレビドラマをそこそこ見る。特に恋愛ものは熱心に見て、ドラマ本編に付随するバラエティ、ドキュメンタリー番組も追跡する。
ところで地上波恋愛ドラマと言えば当然男女カップルのそれを描いているものが大半だが、祈月の性指向的にそれはどうなのだろうか?
……結論から言えば、彼女はまったく問題を感じていない。祈月は俳優や物語の登場人物にガチ恋したり共感したりするのではなく、そこに漂う恋愛的な香りを楽しんでおり、よってテレビの中のカップリングが異性同士だろうと同性同士だろうと、祈月はあまり気にしない。
それどころか、祈月は同性カップルを取り扱うドラマよりも異性カップルを取り扱うドラマを好んで見る。同性カップルを取り扱うドラマには、しばしばわざとらしいほどの教訓や肯定感が伴い、それを苦手としているからである。
◆ エッチなのはいけません!
優羽陽が洋画を、祈月が恋愛ドラマをしばしば見ている以上、実は二人ともフィクションにおける性描写についてはある程度耐性がある。
対して、到理の性欲(≒性的興味)が人並みを下回るのは、祈月に対する執着の稚拙さを見てもわかりやすいだろう。その手の映像への耐性もほとんどないため、もし三人で映画を見ている時に濡れ場の描写が入った場合、もっとも大きく取り乱し、再生を止めたり早送りしたりしようとして顰蹙を買うのは到理である(ただし、この三人に星良が加わった場合、到理はその座を星良へ譲ることになる)。
後記は以上です。
改めて、本編ご読了ありがとうございました。またいつか。