7話 村を目指す道中(スライムはなかなか強いよいです)

 歩き始めてから20分は経っただろうか。もう足が上がらなくなってきた。
 
 「そろそろ休まないか」
 
 こんなヘロヘロな俺に対してしずるは黙々と歩いていく。
 
 どんだけ、体力があるんだよ。それとも20分しか歩いてないのにヘロヘロな俺が以上なのかな?。
 
 「仕方ないわね。10分だけよ」
 
 「ありがとよ。感謝するぜ、しずる」
 
 なんか、顔が赤くなってないか?気のせいなのだろうか。
 
 「しずる大丈夫か。熱中症とかじゃ大変だからな、体調が悪いんなら早めに言ってくれ」
 
 「大丈夫です。ほっといて下さい」
 
 なんで、いきなり敬語になったんだろう。まぁ、本人が大丈夫と言っているのだ。大丈夫だろう。
 
 !?
 
 休憩している最中に事件は起きた……。
 
 トイレに行きたい……。ヤバい、どこかでしなくてわ。
 
 俺は、辺りを見回し出来そうな所を探す。
 
 あそこでしよう。もう我慢の限界だ。10mほど離れた所に木と草が生い茂っているところがある。
 
 「しずる、俺、あそこの、茂みにいるから」
 
 俺は小走りで茂みに向かう。
 
 そして、素早くズボンとパンツを下ろし……。
 
 今日俺は初めて、男で産まれてきたことを心のそこから感謝する。
 
 事件は無事解決したところで俺はしずるの居るところへ歩き始める。
 
 歩き初めたとたん俺は転んでしまった。石などにに躓いた訳ではなかった。右足に何かが足に巻き付いてるみたいな感じだ。草のつるでも引っ掛かったのか。
 
 俺はなにが巻き付いたのか調べるため、視線を足元に落とす。
 
 すると、そこにあったのは植物のつるなどではなく、半透明なゼリー状の何かだった。
 
 なんだこれ、掴めないぞ。
 
 俺は足に巻き付いている何かを取ろうとしているのだが、ゼリー状の何かは手で掴む事が出来ない。
 
 以外と冷たいな。本当になんだろこれ。
 
 足が引っ張られている、その引く力は段々強くなっていった。そして俺は茂みの奥へ引きずり込まれてしまう。
 
 !?
 
 冷たい感触が俺を包み込む。制服越しでも分かった、これは水だ。
 
 息が出来ない。なんとかしてここから出なくちゃ。
 
 俺は水泳は得意な方なのだが、前にも後ろにも何をしても体を動かすことは出来なかった。

 ヤバい。少し苦しくなってきた 。
 
 俺は必死に謎の液体を掻き分ける。
 
 「はぁ、はぁ。なんとか出れた。それにしてもこれがスライムなのか?」
 
 半透明な固まりは、まるでプリンのようだ。たぶん間違い無いだろ。
 それにしてもデカいな!?軽く4mはあるんじゃないか。
 
 早速モンスターで嬉しいんだけど。生憎モンスターを倒せるような道具は持っていない。
 
 俺は取りあえず肩にかけていた鞄の中を確認する。
 
 ・ライター一個
 ・鉛筆八本
 ・ノート二冊
 ・お弁当
 ・祖母がくれたお守り
 
 なんも使えるもの無いじゃん。まぁ、動き遅いし何とかなるよな。取りあえず一回殴ってみよう。
 
 「せっい!」
 
 拳はスライムに当たったかと思うと、腕が飲み込まれていく。
 
 俺は急いで距離を取る。
 
 なんだこれ、全然スライム弱くないじゃん。誰だよ最弱モンスターとかほざいたのは!物理攻撃が一切効かないじゃん。
 
 まったく、どうやって倒せば良いんだよ。俺魔法が使えないし。攻撃手段が一切ない。
 
 このまま逃げても良いんだけどせっかくモンスターが現れたんだから倒してレベルを上げたい。
 
 カサカサ、カサ
 
 なんか少し離れた所から音が聞こえてくる。まさか、もう一体!?スライム一匹も倒せてないのに、別のモンスターが出てきたら間違いなく終わりだ。
 
 「いつまで待たせんよ」
 
 その声は聞き覚えのある声だった。
 
 「なんだ。しずるかよ。驚かせやがって」
 
 「なんだとは、なによ!田中が遅いから来たんでしょ。速くいくわよ」
 
 「それがこれー」
 
 俺はスライムに向かって指をさす。
 
 「なんだ、スライムじゃない。早く殺して行きましょ」
 
 「それがさ、物理攻撃が効かないんだよね」
 
 「そんなことないわよ。見てなさいよ」
 
 しずるはスライムの近くまで歩みより、スライムに向かってデコピンを放つ。放たれた中指はスライムに直撃するやいなやスライムの体は弾け飛んで行った。
 
 「はらね。物理も効くでしょ」
 
 しずるのこの何気ない一言こそが俺としずるとの差を感じる時だった。
 

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