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ディレクターズ・カット②

異性の幼馴染がいる。
そう話す美桜の口調から、微細な変化を感じた。話しぶりこそ何でもないようだが、表情は気持ちの機微があると雄弁に語っていた。
何でも柚木家が出資している会社の経営者の子息で幼少から付き合いがあるとか。

「二つ上でね、お兄ちゃんって感じなの」

琥珀の瞳は柔らかな光を湛えている。
プラチナブロンドの髪を後ろに流し、石楠花色のワンピースに包んだ彼女が朗らかに、その幼馴染の思い出を語る。
それを笑顔で聞く俺の胸は微かに痛む。
まあ、そんなもんだろう。
後から来た俺に、用意された席は無いって事だ。

「あ。ごめんなさい、こうして二人で会ってるのに、違う男の人の話は気分良くないですよね」

誤魔化すようにコーヒーカップに口をつける仕草も、一枚の絵画のようだ。
柚木家の長女として生を受けた彼女は、世俗からはどこかズレている。厭世的に物事を考える身としては彼女の考えは甘く、焦れる。それでも彼女の魅力は陰を落とさない。
チクリと痛む心情に好意がないとは言わない。恐らくは八坂家の権力を持ってすれば、美桜の籠絡は望外ではないのだろう。
然りとて、なんのてらいなく、飾らない笑みを向ける花は散るだろう。
それは看過できない。許容できない。甘受もならない。
始まらない恋でいい。
形式だけの時間を享受しよう。
だから、俺は道化を演じる。彼女の話を聞き、笑い、大人の思惑に起因する時間を少しでも楽しめるように。

所詮、道化は道化だった。
舞台袖で見守るはずが選択肢もなく、否応無しに舞台だけが整えられる。
調号は長調から単調へと移行し、破滅へのプレリュードを奏でるのを、この時の俺達はまだ気づいていなかったんだ。


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書き上がりました。
タイトルは「道化は遁走曲を踊る」です。
本文の後書きにも触れましたが、試みのある構成になってます。大した事じゃなく結果も散々なものになりましたがorz
またもや1万文字をオーバーしたので、今から推敲、手直し作業に入り、問題なければ二、三日中にうpします。それでは、今暫くお待ち下さい。

8件のコメント

  • 更新お疲れ様でした。向こうではかけないので、こちらで。
    ちょくちょく入るガン〇ムネタがいいギャップになってますね。
  • 米ありがとうございます。
    重い話は読む方も書く方も気分よくないので、遊びがあった方がいいですよね
  • 更新ありがとうございました。美桜の事情はあんな感じだったんですね。
    さすがに相手は双子の片割れの弟ではなかったですね。
    次の更新をのんびりとお待ちしてます。
  • なんとか更新出来ました。
    後書きにも触れましたが変な事思いついたのが、失敗でしたね。
    なるはやで頑張ります(`・ω・´)ゝ
  • 今回の話で私の中の美桜の株が上がりましたw
    以前は絵文字、今回はガン○ムネタと所々でいい味出てます!個人的にはスゴく好きですね♪ヽ(´▽`)/
    次回も宜しくお願いします。
  • 美桜はいい娘なのです。
    本当は風雅の取り巻きを黒い三連星ネタをしたかったんですが、雰囲気ぶち壊しになるので止めますた。お褒め頂きありがとうございます。
  • 美桜を犯ったのは、海衣じゃなくて、美桜の幼馴染だったって事ですか。八坂に取られるのが嫌で、無理強いして、奪ったが結局嫌われてしまったと。美桜さんも大変だったようですね。次の話しがどうなってくるか、非常に愉しみです!
  • 風雅は中々のキャラで話を動かすには重宝しますw
    次話は読み手の皆様にメダパニをかけますよ
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