春は素晴らしい。 鼻孔をくすぐる沈丁花の香りに弾む君の笑顔を、桜が讃える。 夏が待ち遠しい。 僕の名を呼ぶ君の声に、蝉時雨も蚊帳の外へと消える。 秋が待ちきれない。茜色の空を眺める君は灯火のように儚く、美しい。 冬は 「お前、何気持ち悪い文章書いてんの?」 はんじょう!? え、どうして?いつの間に? 「いや、ここ楽屋だろ。台本読んでんのかと思ったら気持ち悪りぃ。春だの夏だの、お前引きこもってるから分かんねえだろ。」 はんじょう、それは文学に対する冒涜だよ。 「好きな子でも出来たのかよ。」 そ、それは。 「まぁいいや。ほら、リハーサルの時間だから行くぞ。」 楽屋から去る背中に言葉は出ず、溜め息と共に紙は丸めて窓から投げ捨てた。 春風に乗り紙屑は青空を舞う。 2人の恋の行方は、捨てられた紙屑はどこへ向かうのか。 おにやの本当の気持ちを唯一知る紙屑にもその行方は分からない。 冬は忘れない。はんじょう、君が産まれた季節だ。
ライトノベル作家 既刊書籍 『救わなきゃダメですか? 異世界』全⑥巻 『竹中半兵衛の生存戦略 戦国の世を操る「茶室」の中の英雄たち』 『国境線の魔術師』 『おっさんと女子高生、異世界を行く』①~ 『転生! 竹中半兵衛 マイナー武将に転生した仲間たちと戦国乱世を生き抜く』全⑤巻 『無敵商人の異世界成り上がり物語 ~現代の製品を自在に取り寄せるスキルがあるので異世界では楽勝です~』①~ コミカライズ(原作) 『転生! 竹中半兵衛 マイナー武将に転生した仲間たちと戦国乱世を生き抜く』①~⑤巻
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