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【モブの俺が悪役令嬢を拾ったんだが】書籍1巻発売記念 緊急座談会「1巻を読んでみた感想――」

※こちらは【モブの俺が悪役令嬢を拾ったんだが】の書籍1巻発売記念特別エピソードになります。Web本編への若干のネタバレを含みますので、是非Web本編をお楽しみいただき、その後御覧ください。

Web本編→https://kakuyomu.jp/works/16818093081469820220
 
 ☆☆☆


 真っ白な空間に、内側に向き合うように並べられた椅子が四脚……。そんな謎の空間にどこからともなく集まって来たのは、ランディ達三人とキャサリンだ。

「……またこれかよ」
「みたいですね」
「ただ人数が寂しいのう」
「大丈夫だろ、一人で十人分くらい五月蝿えやつがいるし」
「……アンタのことよね?」
「自覚がねーのかよ。パンチ効いてんな、お前」
「そっくりお返しするわよ!」

 睨み合うようなランディとキャサリンに、リズとエリーが顔を見合わせ溜息をつく。

「とにかく座って話さねば終わるまい」

 エリーが早々に腰を下ろすと、他の三人もそれぞれ腰を下ろした。近すぎず遠すぎず……丁度いい塩梅の位置にある椅子に座ると、それぞれの顔がよく見える。

「で? 話すって何を――」

 ランディが辺りをキョロキョロとした時、エリーの真上からヒラヒラと紙が一枚落ちてきた。エリーがゆらゆらと揺れる紙をつかみ、「今度のお題は……」と全員にそれが見えるように胸の前で広げる。

「1巻を読んでみた感想ぉ……?」
「……そんなメタい事言っていいの?」
「メタい?」

 首を傾げるリズとエリーをよそに、「書いたままを読んだだけだろ」とランディはキャサリンに溜息交じりの言葉を返す。

「ま、いいわ。ちょうどアタシ的にも言いたい事あったし」

 こちらも大きな溜息をついたキャサリンが、リズにジトッとした視線を向ける。

「……何でしょう?」
「アンタ視点増えてるのズルくない?」
「そ、それは……」

 下を向いたリズが、恥ずかしそうに人差し指を突き合わせる。

「仕方あるまい。リズがランディを意識していく過程じゃからな」

 ケラケラと笑うエリーに、「エ、エリーこそ!」とリズが口を尖らせた。

「身体探しの時のやりとりとか、完全に惚れてる感じじゃないですか」
「ほ、惚れてはおらん!」

 顔を赤くしたエリーが、椅子の上で仰け反る。

「わ、妾は孤高の大魔法使いじゃぞ? そんな簡単に絆されるわけが――」
「読んでて思ったけど、結構早い段階で絆されてない?」
「ほ、絆されてはおらん!」

 更に仰け反るエリーに、リズとキャサリンが「素直になりましょうよ」「そうよ」とニヤニヤとして詰め寄っている。

「馬鹿を抜かせ! 妾が絆されるとしたら、せめて【時の塔】以降で――」
「なっが……。何巻先の話よ」
「そもそも結局絆されるなら、今でもいいんじゃないです?」
「そーゆーわけにはいかん!」

 頬を膨らませそっぽを向いたエリーに、リズとキャサリンが顔を見合わせて肩をすくめる。

「そういえば、キャサリン様も出番が増えてましたね」
「そりゃあ主人公だしぃ」

 満更でもないキャサリンだが、「ちょい役ばかりですけど」とリズの豪速球が突き刺さる。

「し、仕方ないじゃない! だってこの時はまだアタシはアンタ達の敵サイドみたいなもんだし」

 口を尖らせるキャサリンに、「まぁ……」とリズも苦笑しつつ頷いた。

「大体アタシの本番は、アンタ達と和解してからなんだから!」
「おっそ……」
「かなり先の話ですね」
「それこそ何巻先の話じゃ」

 呆れ顔の三人に、「仕方ないでしょ」とキャサリンが顔面を覆って「わー」と泣き崩れるように声を上げる。……が、思い出したように顔を上げてランディを見た。

「大体アタシが一番気に食わないのはアンタよ、デカ男!」

 キッと睨みつけるキャサリンに「俺ぇ?」とランディの声が裏返る。

「そうよ! なによこの口絵※! なんでサービスショットがアンタなのよ!」
 ※書籍の始めに挿入されるカラーイラスト(著者は知らなかったので、一応)

 握りしめた両拳をブンブンと上下させるキャサリンが、「こっちはリゾートよ?!」と早口で捲し立てる。

「リゾートwithイケメンよ? しかもアタシの水着! なんならイケメンたちの水着姿まで……なのにどうしてアンタなのよ」

 フー、フーと荒い呼吸のキャサリンが、「アタシ、キャラデザも出来てるじゃない!」と特大のメタ発言をしたことで、ランディ達三人が顔を見合わせそれぞれ口を開く。

「……そりゃ」」
「需要がないから」
「じゃろうな」

 三人から浴びせられた正論パンチに、「知ってるわよ!」とキャサリンが逆ギレ気味に叫んだ。

「そんなに怒るなって、いずれお前にも挿絵がつくって」

 口絵とは言っていない。

「いつよ?」

 ジト目のキャサリンからランディがそっと視線を逸らす。

「……いつ?」
「さ、さあ?」

 頬を掻くランディに、「チッ」とキャサリンが舌打ちの後に大きく息を吐き出した。

「アンタ達はいいわよね……。アタシが必死でゲームのシナリオ通りにっ……て動いてる時に、三人でイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャして」

 ジトッとしたキャサリンの視線から、三人が居心地悪そうに顔を背けた。

「だいたい何よ、この時のエリザベスの照れた顔。どうやってこんな瞬間を切り取ったのよ」
「それは、カメラ片手に【時の塔】で――」
「急にそれらしい設定!」

 特大のツッコミを入れたキャサリンが、「そもそもクラフトどころかアタシが欲しかったアレも――」と更にヒートアップしていく。そうして不満をぶちまけたキャサリンがようやく落ち着きを見せた頃、「そ、そろそろ終わろうか」とランディが堪らず締めに入った。

「えっと……こんなので良かったのでしょうか? キャサリン様が不満をぶちまけただけでしたけど」
「アタシは悪くないわよ」

 頬を膨らませるキャサリンが、「事実しか言ってないもの」とツンとした表情で横を向く。

「でも、この本は別の世界の方々に届ける為のものですよね?」
「まあ、そうね」
「そしてこの座談会も、その方々へ届けるもの」
「そう書いてたわね」
「キャサリン様の不満しか聞いてなかったら、皆さん『要らない』ってなりませんか?」

 首を傾げるリズの言葉に、キャサリンがハッとした顔を見せる。

「仮に『要らん』となったらどうなるのじゃ?」
「打ち切りじゃね?」
「打ち切り?」
「今後は本が出なくなるってこと」

 肩をすくめたランディに「それは……」とリズが何とも言えない顔を見せたその時、キャサリンがスッと立ち上がり、虚空を見つめて目を潤ませた。

「何をしてるんです?」
「さあ? エアー女神の言葉でも受信したんじゃね?」
「あやつもたまーに馬鹿になるのぅ」

 辛辣な三人に「うっさい!」と一瞬だけ眉を吊り上げたキャサリンがまた、瞳を潤ませて虚空を見つめながら、壁に向かって歩き始めた。

「えっとぉ〜。異世界にいるみなさ~ん。キャシぃ〜、みなさんに見てもらえると嬉しいなぁって」

 恥ずかしそうに頬を染め「キャッ」と笑うキャサリンが、瞳をパチパチさせつつ上目遣いで虚空を見る。

「キャシ〜、皆さんとぉ〜――」

 再び始まるキャサリン劇場に、ランディ達三人の呆れ顔は止まらない。

「あいつ、まだアレやってんの?」
「さあ?」
「まあ、この本ではまだやっておるし、よいではないか」

 溜息混じりのエリーに、「そんなもんか?」とランディが力のない瞳で今もアピールするキャサリンを見る。

「……つーか、相変わらずぶん殴りたくなるな」
「駄目ですよ」
「そうじゃ」

 首を横に振る二人に「でもよ」とランディが不満げに横目でキャサリンを見た。

「アレ、逆効果だろ」
「なら止めましょうか……」
「うむ」

 エリーがパチンと指を鳴らしたその時、真っ白な空間に突如として何故かアイリーンが現れた。

「……ここは?! 確か部屋でウェインからの手紙を読んでいたはずだが」

 片手で押さえる頭を、記憶をたどるようにゆっくりと横に振ったアイリーンが、ランディ達に気づき「……ランドルフ少年!」と急に立ち上がって駆け寄ってくる。

「アイリーン様、ご無沙汰して――」
「ランドルフ少年! 私の出番が全く無いのはなぜだ!」

 急に胸ぐらを掴み、メタ発言とともにガクンガクンとランディを揺らすアイリーンに「えー」とランディが困ったように眉尻を下げた。

「聞いたぞ! 異世界に向けて本を出すと。なのに私は本どころか本編にすら出てこないじゃないか! どうなってる?」

「……アイリーン様って、こんな性格でした?」
「召喚の影響で記憶と情緒が不安定なのじゃろう」

 リズとエリーが見守る先で、「わ、わかりました」とランディがアイリーンを宥めるように両手を顔の前に挙げる。

「ちょ、ちょっと聞いてきますんで」
「聞いてくる?」

 首を傾げるアイリーンに、「待ってて下さい」とランディが白い空間の端へ向けて駆け出し……その端を持ってペラっと捲った。

 白を捲った先にある黒い空間に、リズ達三人が驚く中ランディはそこに顔をつっこみ「……そう、あのアイリーン様。出番がいつかって――」と誰かとやり取りをしている。

 そうして暫くやり取りを終えたランディが、若干困った顔をして三人のもとへ戻ってきた。

「……なんと言っていた?」
「分からん、だそうです」
「分からん、だとぉ!」

 アイリーンが顔を歪めたその時、「えぇ〜やだぁ」とキャサリンの間延びした声が空間に響く。

 いわゆるぶりっ子モードのキャサリンを見たアイリーンが、「くっ――」と顔を歪ませ、震える右手を剣の柄に伸ばす。

「でもぉ〜キャシーはぁ、みんなの――」
「キャ、キャサリン嬢……」

 声を震わせるアイリーンに、キャサリンがようやくその存在に気がついて振り返った。

「え? なんでアイリーン様?! 1巻に出てた?」

 奇天烈な声を上げるキャサリンに、「に、逃げろ……」とアイリーンが震える右手を抑え込む。

「わ、私が右手を押さえている間に――」
「えぇ?! キャラまで変わってる?」
「逃げろ!」

 叫ぶアイリーンに「嘘でしょ?!」とキャサリンが逃げ出すのだが……。

「なんでついてくるのよ!」
「早く逃げろ――」
「だからついてこないで!」

 逃げるキャサリンとそれを追うアイリーン。何ともカオスな光景からランディ達が目を逸らし、虚空を見上げた。

「えー。こんな我々の冒険、どうか見届けて下さい」
「えっと……この下にあるリンク?から購入出来るみたいです」
「何もないぞ?」
「異世界には出てるらしいですよ。だから……」

 リズが自身の下を両手の人差し指で指し示すのを、エリーとランディも同じように真似をする。

「これでいいのか?」
「多分……。紙に書いてありますから」
「適当じゃな」

 溜息をつく三人の耳には、「ちょっと、助けなさいよ!」というキャサリンの声が小さく響いているのであった。





 ※おふざけにお付き合いいただきありがとうございます。

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6件のコメント

  • キャサリン壌がいい味出してますねぇ
    頑張れぇ^m^
  • アイリーン嬢、やっぱり返事悩んでたww
    ハヨ書いて返信してあげて
    ww
  • このゴリラことあるごとに半裸になってるから
    毎巻カラー口絵がゴリラのサービスショットになる可能性
  • 全部紙の本に起こして書き下ろしも載せるとなると15~20巻くらいはいきそうだが…。

    キャサリン、そのうち口絵になるって。あのボロボロ泣きじゃくったシーンとか。
  • アイリーンがキャサリンをバタバタと追い回してるのをスルーした3人がすごい
  • 一巻収録分のお話を読んでた頃は、キャサリンがこんなに愛されキャラになるとは思ってなかったなぁw
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