六弦のツグミ、星霜のグラモフォン

高校生の少年・加賀野 泰宏が所持する大正時代の蓄音機には、音々（ねね）という名の付喪神が宿っている。
見た目は女の子、しかし中身は老齢でちょっぴりワガママ。いつも楽しげに主様を困らせては妖しく笑い、二人で遥か昔の旋律に浸って過ごす。百年の漂泊の末に手に入れた日々を、彼女は愛しく思っていた。

黒峰 氷緒は、孤独をまとった少女だ。
傍らにヴィンテージのアコースティック・ギターを抱え、星の煌めく小夜に六弦を奏でる。さながら冬の大空を、ツグミ達が啼いて渡るように。

身を切るような寒さに包まれ、冬の日々は少女達と共に過ぎていく。