第4話

「いきなり大声出さないでよ」


「当たり前でしょ! なに勝手なこと言ってるの!」


 そりゃそうなるよ……。

 僕的にはこのままミトさんに引っ張って貰った方が助かるのはたしかだけど。


「もし合格したとしても、他にサポート役を募集しているチームはたくさんいるし、レボル君と同じ初心者さんのいるチームにわけないと大変でしょ」


「えー、別に教えるくらいなら私でも出来るし」


「それはそうでしょうけど、ミトが普段狩っているモンスターはレボル君には危険よ」


「大丈夫だって。男の子1人くらい守ってあげられる」


 そうだそうだ! ミトさん頑張れ!


「嘘つかないの。今までのパートナーが逃げた理由、忘れたの?」


「そ、それは……」


 あ、あれ? ミトさん目を逸らして弱気になっちゃってる。ダメだよ! もっと押さないと!


「初めてのパートナーは一人で先に行ってしまうミトについていけない。2人目は連携が取れずにモンスターに逃げられてばかりで解散。3人目は今回みたいに無理矢理引っ張って怪我を負わせてしまったの、まさか忘れたとは言わないわよね?」


「忘れるわけないじゃん。でもさ、今度はうまくやれる気がするんだよ。レボル君とだったら」


「何を根拠に。あまり本人を前に失礼なことは言いたくないけど、そのときの子よりもレボル君の方が今は能力が劣っているのよ」


 今さらそんな遠慮しなくてもいいですよ……。さっきから心のなかで忙しくしているのにちゃんと静かに話の流れを見守っている僕偉いと思う。


 それは早く話をつけてもらってメイに報告したいから、が一番の理由だ。久々にちゃんと笑った顔が見れるのが楽しみなんだ。


「それはやってみないとわからないし、今までは女の子ばかりだったのが初めての男の子で変われる可能性があるしー」


「あのねぇ、そんなんだから――」


「あー、もううるっさいなあ! じゃあ誓約書でもなんでも持ってきなよ。サインしてあげるから。レボル君になにかあったときすべての責任を取るとかモンスター狩りの成果が大幅に減少したら即解散とか、今までの反省をいかしたやつ作ってよ」


 ああ、そんな投げやりの態度じゃ。

 お姉さんの呆れっぷりたら、これは僕の合否判定にすら影響しちゃうんじゃ……。


「もういいわよ。そこまでミトがレボル君に固執する理由はわからないけれど、今までの誰よりも真剣に見えるのはたしかだからね」


 と思ったら、いい感じ? 諦めが先行したように見えたのは気のせいってことにしておこう。


「本当? さすがサーシャ! 私の理解人!」


 ミトさんも喜色満面で万歳をしている。

 さあ、割って入るならここだ。


「あの! それじゃあ、僕は――」


「合格よ。そうしないとミトとパートナー組めないでしょう」


「――っ! や、やったぁぁぁああああ‼」


 僕も両手をあげてミトさんのほうを見る。


「おめでとー!」


 そんな僕をミトさんは思い切り抱きしめてくれた。


 顔が胸にうずくまり……はできなかったけど、この微かな柔らかい感触と香りは一生忘れられない記憶として刻まれるだろう。

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