第五十話 君の名は?2
~第一印象は重要である。
でもそれ以上に重要なのは中身。人も、バグも、また然り~
はい、ゴホン。エホンッ。ジャックションッ。
んではでは気を取り直して――
この高飛車ヤローめ……
そんな態度を取るならこっちにも考えがあるもんねぇー。
えーと?
【……庶民に名乗る名はありませんわ】
だったよね? ほぉー、へぇー、ふーん――
「あ、名前ないの? じゃあー……ゴスゴースって呼ぶね」
《ご、ゴス?》
「いい名前でしょ? 見るからにゴスゴースって感じだもんねっ。
私みたいな庶民! じゃあ到底出せないゴスゴース感だもんねぇー」
よっ、ゴスゴースっ!
プルプル……
《チュン》
「ない語彙力を表情で全カバーして
ちゃんとムカつかせるのがお前の凄い所だな」
……うん。どこも褒めてないね。貶し100パーセントじゃん。
それじゃあただの、トークの出来ない顔芸一発芸人じゃんか。
……いや、一発でも売れるのは凄いことだよ。
え、じゃあ――褒められてるっ?
いやぁ~、それほどでもぉ~!
《チュ……》
「もうポジティブシンキングとかの次元じゃねェな……キショい」
き、ききキキキショいぃっ⁉ 気色が悪いってことっ⁉
なんでだよっ‼ てかそこは別にどうでもいいじゃんっ‼
この通りっ、ゴスゴースはプルプルしてんだからっ!
私のことを射殺すような目で見て来てんだからさっ!
それでいいじゃんっ!
――――あれ。それっていいんだっけ。
キッ!
《
以後、くれぐれもお見知りおきをっ‼》
あ、名乗ってくれたよ。
私に向けてしか名乗ってないけど。
「あ、はいはい。じゃあ、ブラちゃんで」
《あ、貴方ねぇ――!》
「んで、鬼くんは?」
《なっ! わ、私を無視するだなんて……信じられませんわっ》
《…………》
ほうほう、なるほど。
『…………くん』か。
《チュッ》
「な訳ねェだろ」
《あ、あの……》
ん、どうした村人Bよ。
コソッと口を耳元に寄せてきて。
《ほ、本当に僕達、大丈夫なんでしょうか。
その、鬼族の方、こ、怖いですし》
「え、なに? そんなにヤバイ人なの、鬼くんは」
《それはそうですよっ。
ほら、周りの受験生さん達も鬼族の方をチラチラ見てますし》
え? さっきから感じてたこの視線って
全部、鬼くんに向けられてたの?
あれれぇ。てっきり私を見ているのかとばかり。
《チュッ》
「ハッ」
嘲笑っ⁉ 今、確実に嘲笑したでしょっ⁉
《耳を傾けてみてください。
そうすればいかに鬼族の方が恐れられているのかが分かりますよ》
へぇ? どれどれ――
《見ろ、あれ。
鬼族ってこの試験受けていいのか?》
《えぇっ、鬼族だっ……
暴れたりしないよねぇ?》
《鬼族がヒーローになれる訳ないだろうに……》
《同じチームにならなくてよかったぁ……》
ふーん。
これ、怖がられてるって言うよりさぁ――
《え、見て。鬼族と組んでるのってあの……》
《ホントだ。確か試験会場Cにいた可哀想な……》
《あのボロボロの服、本当に本物の悲劇の子なのかな。
それともキャラ作り……?》
《いや、あれは本物だろ。
あんなボロボロの服をこの試験に着て来るくらいだ》
《ボロボロ……可哀想……》
あ˝?
プッツン。
「へぇーーーーーー?
見た目や噂でしか人を判断できないとか、
ここにいる奴ら全員、
ヒーローにもヒロインにもなる資格ないねぇー」
《 《 《っ――⁉》 》 》
あららぁ、敵意を一斉に浴びせられちゃったよ。
私ってば人気者だなぁー、あははははっ。
「アンタらさぁ。もっと本質を見ようよ?」
《チュン》
「お前の本質は見た目以上だもんな」
でしょー?
《チュ》
「見た目以上に悪いもんな」
そっちかいっ⁉ 誰が本質、見た目以下だっ‼
《貴方ねぇ! 滅多なこと言うんじゃないですわ!》
《そうですよっ!
ここの人たち敵に回してもいいことないですって!》
「うっさいわっ!
私のことを悪く言うなんて1000年早いんだよっ!」
あぁ、いや。
何回、輪廻転生しても早いわっ。
《ほらっ! 行きますよっ!》
「いやいや待て待て、村人Bよ。
もう一言、いや五言くらい言わないと私の気が済まないのだよ」
主にスウェット。
こいつらにスウェットの良さを徹底的に叩き込まんと気が済まんっ!
《そんな言う前にここ追い出されちゃいますよっ!
試験中に揉め事なんてあり得ないですよっ⁉》
ちょっ、だから待てって。いや、ちょっ――
お前よく初対面で人を羽交い絞めにできんなぁっ⁉
いやだぁーっ‼
私はあいつらのアホ面を真っ赤に染めるんだよぉー‼
ジタバタッ‼
《チュ……》
「ホント、どうしようもない奴……」
《あ、そこの君》
あ˝?
おっと、そのスーツにサングラスは運営の人か。
反射的にメンチ切っちゃったよ。
「なんですかっ?」
今、取り込み中なんですけど。
てかよくこの状態の人に話しかけたな。
私、羽交い絞めにされてるんですけど。
《扉に入る前に、そのペットは置いていってください》
「へ」
《チュッ》
「誰がペットだっ」
ゲシッ。
《なっ⁉》
え、嘘。
悪ドリ――一緒に来てくんないの?
《今の内ですわ!》
《は、はいっ!》
ズルズルズル……
あまりに突然のことで放心状態の私は、
村人Bに羽交い絞めされたまま扉の中へ引きずり込まれた……
LOADING・・・
《…………》
《ちょっと。なにボーっとしていますの、いきますわよ》
《…………》
コクッ。
ピコンッ!
【ムラビ・トビー ブラック・スノー が 追加されました】
《――チュ》
「――さて。
オレもちょいと調べるか」
第五十話 君の名は?2
~第一印象は重要である。
でもそれ以上に重要なのは中身。人も、バグも、また然り~ END・・・
君も彼も彼女さえも、ようこそバグ物語へ わしゃまる @washawasha
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