詩  「言葉たち」

@aono-haiji

第1話 詩  「言葉たち」


頭の中にある平原には

灰色と青の草原が無限に続いていて

ムツキ鳥は 言葉を拾い集めるのが大変だ

草の中には 

ぎらぎらしたつるぎが顔を出すこともある

でも 何でもないんだよ

言葉たちは ゆく所も帰る所も知らない

ただ 生まれたい願いを持っているだけ

重かったり 軽かったり

意味もなく笑っていたり

そう

悲しみや 喜びや 淋しさがないと

手をつなぐことも知らない

死にやすいし 腐りやすいし

なのに

光もないのに きらきらして

どこまでも美しいんだ



「ごめんなさいね。こんなに遅くなってしまって。

会計報告書は、ヒジカタさんに送っておきました。

運営委員会までには清書して、皆さんに配れます。

ハラ先生や講師の方へのお礼は準備してあります。

よろしくお願いします」

今 わたしは言葉を使っていない

他人ひとの言葉がわたしの顔を踏んずけて

走り回っているだけだ



本当のわたしの言葉は

こんな所にいない

今ごろ

あの平原の湖の中で

仲間たちと自由に泳いでいる


役に立つために

生まれたのじゃないから


自らの務めを知らないで生きている

ほんとうの ほんとうの 自由が

かれらには ある

だから どこへ飛び立っても

何をこわしても

何を叫んでも いいんだよ


わたしが そ知らぬ顔をして

あなたたちの自由のために

真っさらな光るやいば

両手に握っているのだから



どこへでも自由に 行きなさい

そして 初めて出会う言葉たちと

愛し合い 傷つけ合い

お前たちから ほとばしる

無限の可能性を

どこまでも 拡げていきなさい

そして 最後は


わたしを捨てて 

振り返らずに 行っていいんだよ

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

 詩  「言葉たち」 @aono-haiji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る