第13話 正体 2
全力で走ってようやく、やけに静かに感じる
連絡もなしに入るのはどうかと思ったけど、何もなかったのなら後で謝ればいい。
そう考えて、中に入るために俺は家のドアノブをひねった。
「あれ、あいてる……」
まさか鍵が掛かっていないとは思っていなかったので、スマホを片手に連絡する準備をしていたのだが、その必要は無かったようだ。
自由に出入り出来る状態だったので急いで家に入り、廊下を走って目的の場所の前まで着いた。
続けて俺は彼女の部屋のドアを勢いよく開ける。
そして、俺は絶句した。
「っ――――」
ベッドで
確かにその姿を見ていい気分はしなかったが、それよりも衝撃的なことがわかったからだ。
「え……、
そう。
相手はまさかのクラスメイトだったのだ。
髪はセンター分けで身長も高く、いかにも陽キャというような感じの見た目をしている。
ほとんど喋ったことがないというのもあるのだろうが、通話越しでは全く気付けなかった。
「やっぱりお前っ……、」
彼は俺の姿を見た瞬間、睨みつけるように目を細めた。
殺気の籠もった目を向けられて、俺は一瞬怯みそうになる。
「好きなんじゃねぇのかよ! 嘘吐いてねぇでちゃんと答えろよ!」
しかし、
「
あ――――。
そんな、聞き覚えのあるようなセリフを聞いて、胸がドキリとした。
恐らくあの言葉は、自分を守るための……。
俺は、誤解が全て解けてホッとしたときのような、安心感に包まれるような感じがした。
妙な圧力に押されて二人を眺めながら立ち尽くすことしか出来ないが、俺はホッとした気持ちを抑えて緊迫した空気の中で息をする。
まだ、気を抜いていい時ではなさそうだから。
「じゃあなんで俺とは付き合わねぇんだよ!」
再び男は大声でそう叫んだ。
普段学校で見る彼とは別人のような必死さに、何も言われていないこちらの方が身震いしそうになってくる。
「アンタは好きじゃないから! しかも
女子だからというのもあってか声はそこまで大きくないが、それでも不思議と
それから少し、沈黙の時間が流れた。
普通に気まずい。この場に居づらいような、そんな感じ。
「クソッ……」
突然、彼はそう呟いて立ち上がった。
続けてベッドを降り、ゆっくりと怒ったように歩きながら部屋を出ていく。
どうやら、今日はここで引き返してくれるようだった。
それから、窓から顔を出して
「……ありがと」
いつの間にか涙を流していた
やはり、
いつ殴り出してもおかしくないような雰囲気の男を見て、傍観者だった俺でもビビりそうになるレベルだったのだから。
「多分……、
力の籠もっていないような声で、彼女はうつむいて言った。
「…………うん、」
こんなときどうするのが正解なのかわからなかった俺は、ベッドで座っている彼女の隣に腰を下ろして、優しく頭を撫でてやることしかできなかったのだった。
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