第12話 正体 1
「えっと……、どうしよう……。家に入っていくところ見てたってことは、近くにいるってことだよね?」
俺は一度状況を整理するために、確認するように
すると彼女はすぐに首を縦に振る。
続けて窓から顔を少し出して、周囲を確認してから口を開いた。
「まだすぐ近くにいるってわけじゃなさそうだから……、その、呼んでおいて悪いんだけど、一旦帰ってくれる……?」
「おっけー」
「ほんとにごめん。鍵開けろとか言ってドアの前で待機されたら困るから……」
もし
面倒なことの例がパッと思いついたところを見た感じ、過去にも同じようなことがあったのだろう。
だんだん、モテるって大変なんだなと思い始めてきた。
俺には関係無いけど。
「じゃあね」
「うん」
そうして、男に見つからないかドキドキしながら家まで走っていったのだった。
◇ □ ◇ □ ◇
違う道にいたから気付かれなかっただけなのか、それとも出てきたのが目的の相手ではなかったからかはわからないが、俺は誰とも遭遇することなく家まで帰ってくることが出来た。
少しホッとしながら、俺はすぐにスマホを確認する。
「あぁ……」
数ヶ月ほど前。付き合っていた当時、時々暴力をふるわれたり、嫌がらせを受けたりすることもあったそう。
それで怖くなった彼女は、別れることを決めたのだという。
しかし相手がそれを認めてくれていないようで、今のような関係が続いているらしい。
さすがに殴られたりしたら嫌がるだろうけど、好きな人を手放したくないという気持ちはわからなくもない。
暴力はよくないと思うけども。
「大変そうだな……」
なんて呟きながら、俺はベッドに寝転ぶ。
そこで俺はふと思った。
男は人を殴ったりするような相手なんだ。強行突破して家に侵入するようなことをしないと言い切れる訳では無い。
もしかすると、今も
その時ちょうど、スマホにメッセージが届いたことを伝える着信音が鳴った。
『アイツが家に入った』
見ると、そんな短い文章が送られていた。
「……やばい感じ、かな……?」
もしかして、俺が出たのに声をかけなかった理由って。
どんな手段で入ったのかはわからない。
しかしこんなことになるのなら、彼女の家に残っておけばよかった、なんて思ったりもしたのだった。
「……行こう」
そう呟いてすぐに、一瞬しか戻れなかった自分の家を後にした。
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