第6話 いい雰囲気だったのに 2
他人に見られた瞬間に俺と物理的な距離を取った
彼女という立ち位置にいる人物に失望したような目を向けられるのは結構辛かったりする。
「……え、なんで
俺は内心焦りながら、でも顔には出さないようにそう尋ねた。
するとショートカットの
「そりゃあ、付き合ってるんですから。彼氏が見えたら追いかけるぐらいするでしょ?」
彼女は当然のことを言うように、表情一つ変えずに堂々と言った。
本物の彼女である
「……浮気?」
「違う。付き合ってないから」
面倒臭いことになったなんて思いながら、俺は活発そうな後輩を見つめた。
ちろっといたずらっぽく舌を出して彼女は笑う。
「いやぁ、たまたま屋上に来てみたら男女が抱き合ってて焦ったよ」
「……見てしまったなら普通帰るでしょ」
「それが彼氏さんの浮気現場なら叫ぶでしょ?」
その言葉を聞いて困惑した様子で視線を泳がせている
「とりあえず黙ろうか」
怒られた彼女はわざとらしくシュンとなって、ちょこちょこ歩きながらこちら側へ寄ってくる。
そして俺の前で止まったかと思えば、すぐに両手を広げて抱きつくように引っ付いてきた。
チラッと隣を見ると、呆れたように俺のことを睨んでいる
「彼氏さん温かいです」
「ちょっ、マジで誤解されるようなこと言うな! お前彼女じゃないだろ!」
「でもすごく仲が良さそうに見えますね。実際どうなんですか?」
「いや、
「さすがにひどいよ。告白してきたのそっちなのに」
「ほんとに誤解だって!」
「私は
「え、?」
あれ、嬉しい言葉が聞こえたような。
「今日だって早く家に行った一番の理由は会いたかったからだよ!?」
必死の様子で
「……あ、はい……」
「うわ、せんぱい顔真っ赤」
「黙れマジで」
俺は無理やり
「あぁー、逃げられちゃった。まあ面白いもの見れたから今日は帰ることにしてあげよう」
「最初から帰ってくれてたら一番ありがたかったんだけども」
「んー……。まあ、とりあえずばいばい」
俺が呟いたのを軽く流して、彼女は大きく手を振りながら屋上から去っていった。
気分が変わったのか、すんなり帰ったことに驚いたりもした。
アイツのせいでいい感じの雰囲気は壊れて、妙に気まずい。
「……
「……ほんとに?」
「本当に」
彼女は少し悩むように空を見上げて、視線をこちらに戻してから口を開いた。
「……じゃあ信じてあげる」
その言葉を聞いた俺はホッとして、胸を撫で下ろした。
まだ続きがあるとは知らず。
「その代わりに、」
と何か言いかけて一瞬戸惑って、ちょっと時間を置いてから続けた。
「もう一回、告白再現してみてよ」
まさかのお願いに、俺は一瞬胸が苦しくなる。
「…………いやだ」
「じゃあ信じない」
「えぇ……。それは困る……」
「じゃあやって」
「はーい……」
そう渋々返事をしたのは良いものの、恥ずかしすぎて思い出すのも嫌になるあの告白をもう一度しないといけないと考えると憂鬱な気分になる。
「じゃあ、楽しみにしてるねっ」
「あはは……」
急に上機嫌になった
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