第4話 やってみたいこと
あれから少し部屋で雑談をして、家を出た。今は
ただ二人で散歩をしているわけではなくて、彼女の帰りに付き添っているだけだ。
一人の時に部屋で見たときは頼りなく感じた街灯も、今は気分のせいか妙に明るく光っているように見える。
「……ねえ」
誰も喋らなかった静かな時の中、
顔をこちらに向けて、言葉を続ける。
「もう一回聞くけど、明日一緒に学校行かない?」
天使のように、彼女はニコッと笑った。
薄暗くてはっきりは見えないが、それでも期待しているのが伝わってくるような声をしている。
「…………いいよ」
気付けば俺は、そう返事をしていた。無意識のうちに。
家で聞いた言葉のお陰で気分が楽になっていたからかもしれないが、すんなりと本心が出てきたことに自分でも驚いた。
俺の返事を聞いた
「やった」
なんて言いながら小さくガッツポーズを取る彼女を見て、純粋に喜んでいるような、そんな感じが伝わってきた。
そして、俺もつられて嬉しくなるのだった。
◇ □ ◇ □ ◇
朝。俺は起きたばかりで歯を磨いている最中だというのに、軽快なインターホンの音が家中に鳴り響いた。
誰が来たのか確認もせずにパンを口に詰めて、俺は慌てて家を出る。
「おはよ」
外にいたのは予想通り。
安定して似合っている制服姿で、珍しく髪の毛を後ろでとめた
小さく控えめにひらひらとこちらに手を振っている。
それに反応して手を振り返しながら、俺は会話を始める。
「さすがに来るの早すぎじゃない?」
「いやぁ、ちょっと行きたいところがあって」
くるっと俺に背中を向けて彼女は歩き出し、少し時間を開けてから続ける。
「てか、今日は元気そうじゃん。昨日家まで行った甲斐があったかな?」
笑いながら言う
「……まあ、そうかも……」
「なら良かった」
「うん。ありがとう」
「また何かあれば呼んでよ。いつでも話し相手になってあげる。……それと、なんでこんなに早く誘いに来たかなんだけど……」
急に話題を戻した
「屋上行ってみたいんだ」
「え、あそこって行けるの?」
「知らない」
「…………」
屋上はちょっと気になってはいたので一瞬期待したが、まさか行き方すら知らないとは思っていなかったので俺は落胆した。
「二人ってきりで屋上とか、なんか良くない?」
ほんのり朱色に頬を染めた
いやでも、確かに彼女の言っていることはわからなくもない。
これこそ一度は体験してみたい理想の青春という感じで、憧れはある。
「良いかも」
そう答えたとほぼ同時に、右手が柔らかくて温かい何かに包まれた。
そっと
「でしょ?」
「……うん」
外で手を繋ぐなんてことをするのにはちょっと抵抗があったけども、周りに人がいるわけでもないので逃げ出したいと思うこともない。
俺と
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