第3話 彼女の本当の気持ち 3
あまりにも突然の出来事なので、俺は困惑することしか出来なくなってしまった。
座っていて頭の位置が低いというのに、
そのせいで彼女の柔らかい胸が、容赦なく俺の視界を塞いでくる。
「……ちょっ、」
俺は慌てて
あっという間に顔が熱くなって、視線を合わせるのも恥ずかしくなってきた。
「あっ……。ご、ごめん……」
先に仕掛けてきたのは彼女で、反射的に体が動いただけとはいえ、無理に相手を突き放すように押したのは俺だ。
すぐに反省して謝り、少し頭を下げた。
「……やっぱ、嫌だった?」
ふいに、そんな残念そうな声が聞こえてくる。
「いや……、別に嫌ってわけでは……」
なんと言えば自分の気持ちが上手く伝わるのかわからなくなり、俺は口籠ってしまう。
すかさずといった感じで、
「……ねえ、正直なところ、どうなの?」
「なに……、が?」
「いや、
声だけで同情してしまいそうになるほど落ち込んだような暗い雰囲気を出して、彼女は言った。
俺はなんとなく頭を上げて、
「え」
真っ赤だったのだ。頬だけでなく、耳の先まで。
俺が見ていることに気付いた彼女は、恥ずかしそうに視線を逸らして両手で顔を抑えた。
明らかに照れているような、そんな反応。
「……教えてよ。こっちは勇気出して聞いたのに……」
ちょっと辛そうに顔をしかめて話す
ずっと黙っているというのも良くないだろうと思った俺は、一度深呼吸して気持ちを落ち着かせてから、小さく答えた。
「好き、だけど……」
自分の思いを伝えるだけなのに妙に気恥ずかしくなってしまって、俺は再び目をそらしてしまった。
それからしばらくお互いに口を開かず、沈黙の時間だけが流れた。
さらに少し時間が経ってから、
「……たしも、」
「……え?」
聞こえるか聞こえないかのギリギリのラインを攻めるような小声で、彼女は何かを言った。
気が緩んでいたというのもあってか、うまく聞き取れなかった。
俺の戸惑う様子を見て察したのか、
そして口を俺の耳元に近づけて、囁くようにある言葉を放った。
「私も大好きだよ」
放課後に聞いた言葉と矛盾していることなんて、一瞬でどうでも良くなった。
今はただ、嬉しい気持ちと照れるような気持ちが混在しているだけ。
俺のモヤモヤした気分もいつの間にか晴れていて、幸せに満たされるような感覚になったのだった。
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