創作苦労話:書きたいものと、書くべきもの

 ミストリアンクエストも第4章に入り、今のところは順調に執筆を続けることが出来ております。すべてはお読みくださる皆様のおかげですね。ありがとうございます。



 さて、今章に限らずミストリアンクエストを執筆する際においてスラスラと、それはもうノリノリで書き進められるエピソードと、どうにも言葉が詰まり、投稿までに数日から数週を要してしまうエピソードがあります。


 すでに脳内にて物語は出来上がっておりますので、決してネタ切れというわけでもない――にも関わらず、筆が詰まってしまう。


 その原因が、長年わかっておりませんでした。



 なのですが――。

 その理由の一つが、ようやく判明いたしまして。


 それが本項のタイトルでもある〝書きたいもの〟と〝書くべきもの〟の違いですね。まずは、その定義についてお話します。




 〝書きたいもの〟というのは、その字面どおりに作者自身がえがきたい展開や場面ですね。例えばジャンルが現代ドラマで、〝主人公と仲間たちが温泉に行く〟というエピソードを〝書きたいもの〟とします。


 そして作品がいわゆる一話完結型の〝日常系〟ならば、何の迷いもなく温泉でアレやらコレやらではしゃいでいる場面を書けば完了です。


 実際、作者が書きたい場面は〝温泉でのキャラ同士の絡み〟なので、とても筆が乗るでしょうし、読者目線でも良い場面に出合えるかと思います。隙間時間で読むのにも適していますし、展開がスピーディなので★が多く貰える傾向にもありますね。



 しかし、これが時系列のしっかりした〝ストーリーもの〟であった場合には違ってきます。しっかりと〝書くべきもの〟を描く必要があるのです。


 まず、温泉の位置が近場でないのならば、旅行計画を立てる必要がありますね。そして仲間と一緒に向かうのであれば、全員のスケジュールの調整も必要なはずです。


 実際、友人を「今から飲みに行かない?」と誘っても、「今日は予定があるから無理」と言われる可能性があるものですし、いきなり温泉に行くというのは不自然です。


 しかも後日行なわれる計画に対し、一発で数人の予定が綺麗に噛み合うなんてことはありえないでしょう。ですので、まずは〝温泉回〟の前に計画や予定の調整などを話し合う描写がなければ、読み手に「なんでいきなり温泉にいんの?」と思われてしまいます。



 次に、温泉に向かうための交通手段も描く必要がありますね。自家用車なのか、電車なのか、テレビ番組よろしく路線バスと徒歩のみなのか。


 道中においても当然、仲間同士での会話もあるでしょうし、現代ドラマならではの出会いもあるかもしれません。読み手目線であれば、具体的な景色や場所の描写も欲しくなってしまうところです。



 そしてようやく温泉に到着し、本題の〝書きたいもの〟である温泉シーンを描くことが可能となります。やりましたね、存分に楽しみましょう。


 しかし、ここで終わって良いわけではありません。


 よほどの温泉マニアでもない限り、わざわざ遠出しておきながら「温泉に浸かって、すぐ帰る」なんてことにはなりませんよね。きっと入浴中の話題でも、今後の予定について盛り上がったはずです。



 はい――。

 温泉宿なり宿場町の料理店なりでの、食事シーンが必要となります。


 そして宿まで来たのならば、当然ながら一泊しますね。どんな料理が出たのか、そして眠る前に何を話したのかなど、ここでも仲間同士のやり取りがあるはずです。


 枕投げか怪談か恋愛話か。

 それとも一斉にガチャを引き、結果を見せ合うのかもしれません。


 そして、ようやく就寝です。

 そして……。まだ終わりではありません。


 ストーリーものの場合、その後主人公らが元の生活へと戻る描写が必要ですね。

 帰るまでが温泉回です。



 さらに、ここが一話完結型との違いですが、〝温泉に行ったからには、主人公らに何らかの変化や影響がなければならない〟ということです。


 そうでなければ完全なる〝無駄回〟となってしまい〝作者が書きたかっただけじゃん〟と言われてしまうわけです。せっかく苦労して書いたのに、ここをサボると〝夢オチ〟と一緒になってしまいます。最後まで手を抜いてはいけませんね。




 さて、話を私のミストリアンクエストに戻しますと――。


 ええ、要するに……上述した場面の〝温泉シーン〟の部分以外を執筆している際に、極端に筆が遅くなってしまうというわけなんですよね。つまりは〝リアリティを持たせるためのエピソード〟を執筆している場合に遅筆になるということです。


 これは特に、過去投稿分の改稿作業をしている時に顕著です。

 特に第1章などは「YouTubeのなろう系酷評動画を参考に、ツッコミを入れられないストーリー展開に注力しすぎた」結果、〝書くべきもの〟が大半を占めているのです。


 そのあたりの苦労は、こちらにございます。


創作苦労話:敬語の使えない主人公

https://kakuyomu.jp/works/16817330664120023812/episodes/16817330664125730490


 改稿が滞っているのは、このためなんですよね。

 申し訳ないです。



 ミストリアンクエストはファンタジーですので、ある程度は強引な展開も可能なのですが――それをやってしまうと一瞬にして、ここまで築き上げた作品世界が〝作り物〟と化してしまうわけです。


 読み手や書き手自身が、あの世界や、登場人物たちの存在を信じられなくなってしまえば、もはや作品としてはお終いですからね。


 それゆえに、絶対に手を抜くことができない。

 それが知らずのうちに、自身へのプレッシャーとなっていたわけなんですよね。



 もっともミストリアンクエストは、〝主人公世界そのもの〟といっても過言ではない作品ですので、リアリティを持たせる〝書くべきもの〟を描いている最中においても、楽しんで執筆することができております。しかし心のどこかでは「ここを絶対にミスるわけにはいかない」というプレッシャーがあったのでしょうね。



 ――と、いうわけで。今後も〝そういった場面〟では、筆が遅くなる可能性がございます。やはりね、こればっかりは手を抜いてはいけないと思うんですよね。




 ミストリアンクエストおよび〝真世界シリーズ〟は設定と世界観こそが命です。


 エルスたちの冒険は私が生きている限り、生涯描くつもりです。

 それでも極端な話、主人公や登場人物はいくらでも変更できます。


 ファスティアで異界迷宮ダンジョン探索を生業としている冒険者パーティを描くこともできますし、ガルマニアでひたすらに開拓生活をすることも可能です。


 ノインディアの錬金術士を主役にすることも出来ますし、世を忍ぶ善良なるてんせいしゃたちの姿を描くことも出来ます。


 また、エルスたちが冒険を終えた遠い未来の話も、いずれ投稿する予定です。

 しかし、まずは〝過去編〟となるミストリアンエイジを完結させますので、どうか気長にお待ちいただけますと幸いです。



 私の目標は、いつかこの世界観を使って、多くの人に考察や二次創作をしてもらえるような作品を世に遺すことです。クトゥルフ神話のような存在ですね。そのためにも、世界観だけは磐石にしておく必要があります。




 はい。結局のところ解ったことは、「やっぱり手は抜けないので時間がかかってしまうのは仕方ないな」ということですね。とはいえ、少しずつでも速度を上げられるよう、努力を続けなければなりません。


 その点において、やはり文章の基礎を教えてくださった〝辛口批評企画〟には改めて感謝したいですね。文章をろくに知らなかった頃は、もっと遅かったですから。


 本当に、ありがとうございます。



 ――と、いうことで。

 今回は、このようなお話となりました。


 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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