私が「お」と好感する小説の要素について

 ハヤシダノリカズさん(https://kakuyomu.jp/users/norikyo)主催の自主企画「ヒトの業を描いた普遍的な物語を読ませてくだい(https://kakuyomu.jp/user_events/16818023214164584571)」に代表作『血の鎖』をエントリーさせていただいたところ、ハヤシダさんに読んでいただけたばかりか★とレビューも頂戴してしまいました。まことにありがとうございます!


 代表作は他の作品とちがって及第点をクリアしているものと思っておりますが、とにかくまあ読まれませんで。


 もっとも、カクヨム読者の大多数が求めているであろうノリとはかなり毛色がちがいますから読まれないのは当然も当然なんですが、それでも、ちょびっとはPV欲しくなる恥ずかしい気持ちが、むかしならいざ知らず、いまの私にもあるんですねえ。重ねて御礼申し上げます。


 と、ここまで書いたところでまた他の方に★をいただいてしまいました。ありがとうございます! 彼方のさもしい承認欲求が度外れに満たされましたっ……!


『血の鎖』に関しては、仮に誰かにこき下ろされたとしても、「いや、これはまあまあちゃんと書けてるんで、好みの問題ですね」くらい言ってもいいのではないかと思っています(所詮習作レベルであるにしても)。


 他の作品は……まあ、やっぱりその、ごめんなさいって気持ちになっちゃう。いや、『エステファニア・ヴィラロボス』は大丈夫か。あと二話、がんばって書き上げなくっちゃ。



 ――ところで、ところで? えっと、閑話休題ですね。


 ちょっとまえに実家で母と記号論っぽい話題でおしゃべりをしていたのですが、雑談ゆえ総じてうろ覚えながら、印象としては薄からぬところもありまして、今般冠したタイトルにことよせてちょこっとだけ書いてみようかなと思います。


 それは、記号の《示差しさ的特徴》(=共通性ではなく差異を規定するものとして機能している特徴)に関するおしゃべりでした。


 共通の特徴をもちつつもことなる特徴をあわせもっているために区別されるふたつの記号は術語的に《対立》しているとされるわけですが、その「同じだけどちがう」という《対立》の構造こそが「意味作用」を生み出す淵源になっているんだよね、というところが「考え方として好き!」、そういう会話ですね。


 そこからはおぼつかない記号論の知識から遊離していくわけですが、ひもづいたところで、「まったく同じもの同士はなにも生み出しえない」ということ、「完全に異質なものはそれぞれ独立しているので干渉の余地がなくなにも生み出さない」ということ、「同じだけどちがう」の衝突が意味や出来事を生んでいく……わかる、とまあ、そんなようなことをば。さらに、バフチンが「感情移入」を貧窮化とも評して否定していたのを思い出し、その方向で話を続けました。


 バフチンは自己の外在性(外部に位置していること)と他者のまなざしに連関する見解として、対話において感情移入に終始するのでは意味がない、他者として出会うのでなければあたらしい意味が生まれることはないし、当人の自己喪失にもつながりかねない、おおむねそんなようなことをいっていたはずです。私としてはこれまた好ましい考え方です。


 そこで母が「でも」と問題提起したのは、たとえば誰かと一緒に映画を観た後とか、共感や感情移入の導線を照らしあわせて楽しんだりするけれども、あれを無意味とはいいえまい、ということ。なるほど。


 私が思うに、そこで照らしあわされる共感や感情移入の類は、表面上相互に「わかる!」と等号で結びつけていても、実相としては「同じだけどちがう」の交通コミュニケーションなのだと思います。相互の均質性に着眼しているようでいて、実は《示差しさ的特徴》をすりあわせている側面があって、そこが対話の意味作用としてまさに大きいのではないかなと。


 つまり、多くの人が尊しとする「共感」とやらについては、字義の通りまったきものなどはほとんど存しえず、おのおの個別の差異を有しつつ、大部分の均質性を認めあっている情態、その安心度の高さと個別性の担保が「よき!」ということなのかもしれないねと、だいたいそんなようなことを母に話して、適度のナルホド感と適度のアキレ顔をいただきました。


 そこから、私が「お」と好感する小説の要素についてなんですが、ここまで書いたらもうタイムオーバーなのでした。いつか書くかもしれませんが、なかったことにしちゃうかも。ひとついえることは、カク側としてもヨム側としても、私にとって「共感」や「感情移入」はローバリューでございます。ジャンルによりけりですけどね。自作『麗しの巫女姫 : Transcription Victims』に関しては、そっち方面の訴求を企図していた時期もありました(現状はぶっちぎりゴーイングマイウェイです)。


 ではではまたね!

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