メリーゴーランドで消えた友達

 次は私の番だね。ねえ、君。廃墟と興味あるかな? 病院とか旅館とか。

 当時使われていたものが残されていたら、一体ここで何があったのかと想像してしまうよね。


 私も肝試しに行ったことがあるんだ。大分昔に閉園した遊園地だよ。友達の田中が誘ってきてね、面白そうだからついて行ったんだ。その時の話をしようか。


 その遊園地は小さかったよ。すごく交通の不便なところにあったよ。周りに家もお店もコンビニもないんだよ。そんな場所だったよ。


 遊園地の入り口の門は鉄格子で閉められてたね。南京錠と鎖で厳重だったよ。私たちは門をよじ登って侵入することにしたんだ。幸い門の近くに木が植えてあったから簡単に忍び込めたよ。


 遊園地の中はゴミが散乱していて汚かったね。アトラクションを錆だらけで不気味だったよ。


 すぐ近くにメリーゴーランドがあってね。田中は見に行こうと言い出したんだ。私は田中の後ろをついて行ったよ。


 メリーゴーランドと言えば、キラキラしているイメージがあるだろう? でもそこの遊園地は赤茶色の錆にまみれてそんなイメージはなかったね。木馬も汚れて、まるで血まみれの馬のようで気持ち悪かったよ。


 私は木馬にそっと触ってみたんだ。雨なんて降っていないのに、じめっと濡れていたね。


 田中は木馬に乗ろうと言い出したんだ。私は遠慮したよ。濡れているのを確認したからね。汚れたくないと断ったんだ。


 田中は私を怖がりと馬鹿にしながら木馬に乗ったよ。その時、急に体が揺れたんだ。メリーゴーランドが動き出したんだよ。私はバランスを崩して、メリーゴーランドから落っこちてしまったんだ。


 田中は木馬に乗ったまま回っていたよ。馬が上下に激しく動いて、田中は振り落とされそうだったよ。そして青ざめた表情で私に言うんだ。「助けてくれ」と。


 でも私にはどうしようもなかったよ。メリーゴーランドの回転が速すぎて助けようにも助けられないんだ。私は謝ったよ。ごめんって。


 田中はずっと泣き叫んでいたよ。「助けて、助けて」って。メリーゴーランドがやっと止まったときには、もうそこに田中の姿はなかったよ。探したけど見つからなかったよ。


 田中に電話しようとスマホを取り出したとき、私は自分の手を見て驚いたね。木馬を触った手が赤く汚れていたんだ。鉄くさい臭いがしたよ。まあ、錆だらけのメリーゴーランドだったから当たり前か。


 それで田中に連絡しても何も応答はなかったよ。次の日も田中は帰って来なかったよ。どこに行ってしまったんだろうね。


 これが私の体験した話だよ。ああ、そうだ。実はその遊園地、ここから近いんだ。今から肝試しに行ってみない? 


『遊園地に行く』   

https://kakuyomu.jp/works/16817330663384580032/episodes/16817330663385726505                                           

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