第42話 桐木さんの料理教室?

綾乃さんの家に着いたけどいつ見ても本当にお嬢様なんだなと実感させられる家である。


「吹雪の実家大きすぎない……?」


「白神くんってこんなところに住んでたんだぁ」


「ご友人さん、今回は文化祭で使うメイド服を借りるということでお越しになられたんですよね。それではこちらの部屋でお待ちしておいて下さい、私は準備をしてくるので」


この家のメイドさんに案内されて部屋の中に入るが何もかもが綺麗で来るのは2回目なはずなのに変わらず落ち着かない。


「蒼井さん、白神くんの対応を変えた方がいいのかなぁ……」


「吹雪くんはそういうのは望まないと思うよ? 別に今までも吹雪くんは怒ってこなかったでしょ」


吹雪くんなら逆に立場とかを気にして敬語とかにした方が嫌がられると思う。吹雪くんには悪いけど吹雪くん自身口調は普通の男子高校生だしこの家の人だなんて気づくはずは無いとおもう。


「お待たせしました。ちなみにロングスカートのタイプかミニスカートかどちらにしますか?」


「正直どっちでもいいよね、まぁ色んなことを考えるのならロングスカートの方がいいと思うよ」


「それなら僕もロングスカートにしようかなぁ。僕は何も思わないけどチラ見えしても嫌だもんねぇ」


このままロングスカートに決まるかと思ったけど紅葉ちゃんは身長が低すぎてここの家にあるロングスカートを履いてしまうと地面に付いてしまうそうなので紅葉ちゃんだけミニスカートになった。


それでメイドの人に身長とかを測ってもらって各々にあったサイズのメイド服を渡してもらった。


「なんかコスプレしてるみたいで面白いね。って紅葉ちゃん可愛いー!」


「身長がもう少しあれば……。というかなんで猫耳も用意されてるんだろ、もしかして付けろってことなのかな?」


メイドさんに渡された服の中には猫耳のカチューシャも一緒にあった。確かに猫耳メイドっていう言葉は聞いたことがあるし可愛いと思う、試しでつけてみてる紅葉ちゃんと奏音ちゃんが実際に可愛いから。


「文化祭でつけたら売上1位も夢じゃないんじゃないかなぁ? 猫耳メイドって誰にでも人気だよぉ」


「元々嫌がってた人は誰かなー?」


「ジト目で見ないでよ紅葉ぁ。なんかここまで来たら楽しくなってきちゃってねぇ」


吹雪くんがメイド服を借りられるツテがあると言わなかったらそもそもメイド喫茶にはなっていなかったとは思うけど、わざわざ言うってことは私たちのメイド服姿が見たかったってことなのかな? それだったら嬉しいけど。


最初嫌がってた奏音ちゃんも今はノリノリだし確かに売上1位も夢じゃないかもしれない。売上1位のクラスは何か景品があるらしいのでどのクラスも本気である。



───一方その頃吹雪。


「久しぶりです桐木さん、また料理を習いに来ましたよ。材料とかここにあるものを使ってもいいですか?」


「もちろん使っていいよ! 一人暮らしは順調そう? 困ってることがあったら桐木お姉さんになんでも相談するんだよっ」


「お菓子を作りたいので教えてください。それもクラス中から期待されてしまったので下手な物は作れないんですよ」


下手にプレッシャーを大勢に掛けられたので本気で桐木さんに習うつもりだ。必ず文化祭の日までには桐木さんの技術をものにできるようにしたい。


「文化祭の喫茶店ならそこまで凝ったものは作らなくていいでしょ? クッキーとかスコーン辺りでも満足して貰えるんじゃないかな」


「まぁ生物は無理ですしそういうのが候補に上がってきますよね」


実際クラスの人から送られてきたメニュー表にもクッキーとスコーンは入っていた。他にはオムライスとかサンドイッチとかがあった。


まぁオムライス以外は先に作っておいて保存しておけばなんとかなるだろう。


「じゃあ今日はクッキーとスコーンの作り方かな。あ、3人お友達を連れてきてるんだし味見してもらえばいいじゃん」


「それでいいですね、じゃあ昔のようにお願いしますね桐木さん」


桐木さんに料理を教えてもらうと懐かしい気分になる。あの時はただ純粋に料理を楽しんでいたっけ。


今となれば生きるために料理をしたり誰かのために作ったりするようになったがそれもそれで楽しさがある。店を持って見るのも楽しいかもしれないが、まぁほとんどの確率で叶わないと思うけど。


「ねぇ、さっきから全部一人でやってるけど私が教えるところないと思うんだけど。もう十分だよ?」


「それは3人に味見してもらってから決めてくださいよ、美味しくない可能性だってあるかもしれないんですから。その場合は桐木さんに習います、というか今から教えてくださいよ」


「いやだからねぇ? 教える必要が無いほどに吹雪くんがもう料理上手なんだって。今の状態でも文化祭で出すものとしてはものすごいレベルが高いものだよ?」


桐木さんにいくら教えてほしいと言っても、もう十分の一点張りで埒があかなかったので俺は自分だけで作ったクッキーとスコーンを3人の元へ届けに行った。

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