第43話 メイドの3人

一応今食べてもらう用と持って帰ってもらう用の両方を持っていったのだが良く考えれば向こうは今メイド服姿なのか……。いやいや、普通に考えて採寸が終わったら元々の服に着替えてるでしょ、奏音とかなら嫌がってたし尚更だ。


「あ、ここってもう入って大丈夫ですか? 誰かが着替えてたりしないですよね」


「ご友人の御三方ですか? それなら既に着替え終わってると思いますよ。それと……本当に従者として失格だと思うんですけどお菓子をひとつ分けてくれませんか?」


「それくらいなら全然いいですよ、どうぞ。それじゃあ仕事頑張ってくださいね」


やはり時雨家にはまだまだ俺の知らない従者さんが沢山いるみたいだ。まぁあの人が喜んでくれたからよかった、着替えてないとの頃らしいので俺はその部屋の中に入った。


「……なんでメイド服のままでいるの? 特に奏音」


「いやね、なんだか楽しくなって来ちゃったんだよねぇ。こんな服滅多に着ることないからさぁ」


確かに滅多に着ることはないとは思うよ? でもさずっと着ておくようなものでは無いでしょメイド服って。というのなんで紅葉だけミニスカート……?


「そうだ、文化祭の時に出す予定のクッキーとスコーン作ってきたから味見してみて。美味しくなかったら俺はもう1回桐木さんに習いに行く」


「ありがとうご主人様! これ1回言ってみたかったんだよねー」


可愛い、やっぱり蒼井はメイドに向いてると思う。もう少して倒れるところだったが何とか持ちこたえた、そこに奏音か紅葉が乗ってきてたら俺はノックアウトされていた。


部屋の端にカゴが置いてあるのだが中身が予想できるので絶対に近づかないようにしておこう。


「これ十分だと思うよ、文化祭のクオリティーだとは思わないほどに美味しい。ただ、作るのが間に合うかってことだよね」


「それは事前に作って保存しておけば何とかなるよ。まぁ俺らだけで話しても意味ないからさ、またクラス全員が集まった時に文化祭の話はしよう」


メイド服姿の3人と俺だけの部屋で何をすればいいとの話なのだが、この場に居続けるのは理性がどうにかなりそう。だって可愛い3人がメイド服姿でいるのにその中で俺だけ男子なんだ、平然を装うのは無理だろ。


「白神くんが今まで見たことないくらいそわそわしてるねぇ。こういう服装が白神くんは好きなのかなぁ?」


「メイド服って全男子が好きだと思うんだけど? 逆にメイド服が嫌いな男子がいたらクラスの出し物はメイド喫茶にならないでしょ」


「それはそうなのかもねぇ、じゃあ白神くんは3人のメイドさんだったら誰が1番好みなのかなぁ?」


その質問は1番答えずらい、俺自身誰かを選ぶっていうことが嫌いなのに誰が好みかって聞かれてもなぁ……。でも3人とも俺の答えを聞きたそうにしてるし答えないということは出来なさそうだ。


みんな良いじゃ許してくれないし、優劣が付くことなく誰かを選ぶ方法はないのだろうか。


「そうだなぁ……本当に強いて言うとしたら奏音かな。俺の好みをぶち抜いてきてる」


この中で今、奏音にしかない特徴があるので奏音を選んだ。俺の好みを知られたのはきついけどこれが一番最適だったのかもしれない。


奏音は今何故か猫耳を付けているのだ。猫耳ボクっ娘メイドって最強だと思わないか?


「僕なんだ……その、ありがと」


奏音は目を逸らしながらそう言った。それと同時に俺は2人からジト目で睨まれるのだった。


「吹雪くんは奏音ちゃんみたいな女の子が好きなんだねー?」


「いや、まぁ……うん」


やっぱ最適じゃなかったかもしれない。その後俺は2人に詰め寄られなんとか俺は考えに考えた結果、2人のメイド服姿も褒め倒しすることで事なきを得た。


お互いに恥ずかしい思いはしたがこの場は収まったので良しとしよう。ただ、奏音からはずっといじられそうである。


「白神くんって案外そういうこと言っちゃうんだねぇ。女子からしたら隠さずに思いを伝えてくれるのは嬉しいよぉ?」


「思ったことが悪くない事なんだから普通に言っても問題ないでしょ。奏音だって可愛いものを見たら可愛いって言うでしょ? それと同じ」


思ったことが人を傷つける悪い言葉なら言わないが俺はただ単に2人が可愛いから可愛いと言っただけであって悪いことは何もしていないはずだ。恥ずかしいというのはあるかもしれないがそれでも可愛いという事実は変わらない。


「白神くんがここまで天然だと2人も苦労しそうだねぇ」


「なんの事?」


「いや、白神くんはまだ知らないくていいよ。いずれ知ることになるんだからさ、その時まで気長に待っていたらいい」


口癖が無くなる時は奏音が真剣な時ということを最近学んだ。奏音が言ってる意味を理解することは出来なかったが大切なことには変わりないと思うので頭の片隅にでも置いておくことにしよう。


「もしさ、あの2人のどちらかが白神くんに思いを伝えてきたとしたらどうするつもりなの?」


「俺は……」


俺はどうするのだろう、相手をなるべく傷つけない選択をしてきた俺にとっては選べないかもしれない。その思いを受け入れても受け入れなくても2人のどちらかが絶対に傷つく、でもそのまま有耶無耶している状態のままでいたら後々苦しむのは俺だ。


「俺は、本当に心から守ってあげたいと自分で思える人を選ぶよ。それが蒼井か紅葉なのかそれとも奏音なのかは言わない、ただ覚えておいてほしいのは俺にだって選択をするってこと」


「そう、僕も候補に入ってるんだ。それなら少しは期待してもいいのかな?」


「少なくとも……本当にこの人と付き合いたいと思った時は俺から告白したいけどね」


相手が蒼井や紅葉、奏音、もしくはこの先で会うかもしれない見ず知らずの人だったとしても思いを伝えるなら自分からの方が好きだ。


「俺に告白する人はいるのかな、どうだと思う? 奏音」


「僕はいると思うよ、だって。ねぇ告白したい人に好きな人がいて、告白する勇気が出ない時はどうすればいいと思う?」


急にそんな事を聞かれるので少し悩んだが俺はこう答えることにした。


「告白せずに後悔するより告白して振られた方が清々しいくてやりきった感があるでしょ? だから俺は無理だとわかっていても告白するかな」


「それが白神くんの答えなんだね……」

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