第4話 約束と看病
俺は今日体調を崩してしまった。まぁ急に慣れない山に何日も連続で登ったんだ、仕方ないところもあるかもしれない。
今日はあの山に行くとはできない、けどあおいは待ってくれているだろう。小学生である俺らにスマホというなんとも便利なものは無いので俺が体調を崩していることを伝えれない。
幸い親は仕事で今はいない、お母さんは昼になれば帰ってくるが2時間もあればあの山に行ってあおいと話すぐらいはできる。
「俺は毎日行くって約束したからな。いつものように長い時間遊べなくても多少の時間なら今の俺でも大丈夫」
幼ければ幼いほど、友達などと交した約束というものを大切にする。その分破ったときの代償も大きいものだ。
特に小学生以下の約束を果たせない時の免罪符を伝えることが出来ない子達というのは少し無理をして約束を果たそうとする。
※※※
俺は途中休みながら山を登ればいつものようにあおいは神社で祈っていた。いつもはあおいが祈っている所を遠くで立ちながら眺めているのだが今日の俺には無理なので石段の上に座りながら眺めた。
「体調が悪いのなら無理してこなくてもいいんだよ吹雪くん」
「初めて俺とあおいが出会った日に俺は毎日ここに行くって約束したでしょ。だから体調が悪くても親の目を盗んでここに来た」
「約束……軽い言葉だね、 すぐに破ることができるんだから。言葉でする約束と、書類でする契約は全く違うんだから」
言葉でした約束ならすぐに破ることができる、今回だって吹雪がここに来ないことだってできたはずだ。逆に書類でした契約は破ると罰がある、だからそう簡単に破ることができない。
約束というものは軽々しくできて軽々しく破られる。
「親がいないからここに来れたんでしょ。じゃあ吹雪くんの親が帰ってくるまで看病するから……って吹雪くんは私のことを親に言ってる?」
「そりゃあもちろん、初めてできた友達だからさ。まぁ高校生じゃないんだから誤解されるようなことは無いでしょ」
「吹雪くんってそういうこと気にするんだね。まだ小学生だっていうのにさ」
そりゃあ気にするだろう、年齢が若くたって男女の関係というのは変わらないんだから。そんなことに気にしてたら俺にそんな気があるのかと勘違いさせてしまうかな?
※※※
誰かを自分の家にあげるのは初めてのことだ。それも遊ぶために入れたんじゃなくて看病してもらうために入れるなんて状況は今後一生来ないだろう。
とりあえずお母さんにあおいが看病のために来ていることと昼ごはんを作ってもらうから冷蔵庫の中身を使うことを伝えたら快く承諾してくれた。
「冷蔵庫の中身は使っていいってさ。というかあおいって料理出来たんだね」
「両親が仕事で風真お姉ちゃんも仕事だったら自分で作るしかないから料理は何回もしたことあるよ。体調が悪い時にどんな食べ物がいいかなんて知らないけどね」
あくまで料理が出来るだけらしいが両親も風真さんも仕事の時に作っていたということは数年前から自分で作っていたことになる。
俺とは全く違う、俺は包丁を握ることすら出来ない。持ったらすぐに怪我をしてしまうだろう。
しばらくしてあおいがお盆を持って俺の部屋に戻ってきた。
「おまたせ、ふーふしてあげよっか? アニメで見たよ、男の子はこういうことしたら喜ぶって」
「そこまでしなくていいって、別に自分で食べれるし。2次元と3次元を混合させるな、3次元で見たらちょっと引くよ?」
あれは2次元だからこそ不自然なく見れるもので3次元だったら違和感有りまくりだ。
「冗談だって。でも熱いのは本当だよ?」
「あ〜~~~っっつ!」
口内を思いっきり火傷したがあおいが作ってくれた昼ごはんは美味しかった。
あおいは謝ってくれたが今回に関しては俺が100%悪いので、俺は「謝らないで」と言った。そりゃあ作りたてのお粥なんだから熱いに決まってる。
「ほんとに大丈夫? 私はお皿洗ってくるけど何かあったら呼んでね」
「大丈夫だから心配しないで。体調もだいぶ良くなってきたから、あおいのご飯のお陰かな?」
あおいはドアノブに手をかけながらこちらに顔を向けて微笑んだ。
それと同時に玄関が開く音がしたのでお母さんが帰ってきたのだろう。皿洗いを終えたあおいは家に帰っていった。
────しっかりとお礼できてないのに。
「今日は無理だけど、いつかあおいにお礼の品を渡さないと。女の子はどんなものが好きなのか知らないけど」
そういえば街中を歩いてればよく女性がネックレスをつけているのを見る。まぁ俺も学生なので高いネックレスは買えない、ネットで安くてあおいに似合いそうなネックレスを探すとしよう。
俺は部屋の中にあるパソコンを開いて、1000から3000円くらいのネックレスを探す。
思っていたより案外すぐに見つかるもので、あおいの指輪のように青い宝石のネックレスを買った。もちろんその宝石は本物じゃない。
まぁ贈り物は気持ちが大事ってお母さんが言っていたし、俺はそれを信じることにしよう。
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