第13話 シアタールームの幽霊の夢

 有名なお化け屋敷に自分は1人で来ていた。それもプラスチックのバットを持って。

 チケットをもぎるお姉さんにバットについて『お土産屋で買いました。』と言い張り、持ち込んでいた。が、多分現実では絶対やっては行けないことだろうなので、現実のお化け屋敷において真似してはいけない気がすることを明記する。


 視界が不明瞭な中、横から脅かし役が飛び出してくるがその人の腕を掴んでは顔を見て「人間だな。」と確認していく自分。何故なら腕を掴んだら戸惑って「え?」みたいな声を出すからだ。

 自分が足を踏み入れたお化け屋敷は映画館を模した珍しいタイプだったのを覚えている。たった一つだけ何故か稼働しているシアタールーム(1番奥)に歩く道程で自分より前にいた人が悲鳴をあげているが、脅かしてくる中にお目当ての『本物』はいないのでスルーする。

 やがてたどり着くシアタールームの席に座ると、短編映画が始まる。

 内容はあまり覚えてないが、誰かの人生だったか、あるいはこの映画館が呪われた経緯みたいな理由が流されたかと思う。そして最後にこの映画の要なのか脅かし役のぐちゃぐちゃな顔の何かが立体的に迫る、という仕掛けだった。

 ちなみにこの時瞬時にバッドをぶん回し、その立体的になった脅かし役(多分3D)を殴った。殴ったら感触があったのでそれが自分の探していた本物だったのだと理解したので、追撃で殴り続けたら途中からスカスカになったので、中にいた追い出すべきブツは追い出せた模様。

 ちなみに先に来ていた客に自分の行動は見えてなかったようで、口々に怖かったねと言った感想を言いながら抑揚ないアナウンスが退出を促す通りに従って歩いていった。自分も従って席を立つ。


 閉じられたシアタールーム、座席表がまだ在席を示す光を放っている。


 そう、たった一席だけ、光り続けているのだ。

 このシアタールームへ来てからずっと、誰も座らずそして最後まで座らなかった席が、まだ。


 実はこの光っている席の方をお化け屋敷の運営側は問題視していて、どうにかしてほしいと何故か頼まれた自分は、依頼されたそれだけをあえて無視し歩いている中でもっとやばいのを見つけたためそちらを追い払ったという覆面調査員的な仕事をしていた(覆面調査員にしてはプラスチックバッドで除霊とはこれ如何にとは思うのだが)。

 お化け屋敷には本物が紛れていることで有名だ。死を扱う場所はいてはいけないものだったり、いても害のないものだったり、『いないといけないもの』だったりと様々寄せられてしまう性があるのだろうとは現実にも通じるものがあるだろう。


 だが今なお光る席は違う。このシアタールーム……いや、お化け屋敷の舞台である映画館は、かつて本当の映画館で機材の老朽化で閉館をやむなくされたのだろう。

 ただ建物に価値があったらしくお化け屋敷として再生した。しかも〆に映像を流すこのシアタールームだけは、何故か機材が全く壊れていない状態でそのまま再利用できたのだ。ただ一つ、在席を示す光続ける席のオカルトだけが問題として浮上してきたのだ。

 原因が科学的に証明できなくても、オカルト的な考え方ならばこう解釈できる。

 この映画館に思い入れがあって、今なおここで見た映画の思い出に浸っていながらシアタールームが残っていることを願っている者が、このシアタールームに居続け機材を守っているのではないのだろうか?と。


 光り続けている誰も居ない席なんて奇妙な存在だろうが、『お化け屋敷』が存続するためにはそっとしておくべきだと自分の直感が囁いた故に放っておいたのだろう。


 ただ。それらをどう説明しようかと背を向けた時に目が覚めたので、説明下手な自分はうまく説明できたのだろうかと不安は残ったということも明記しておく。

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夢雑記2 柴犬美紅 @48Kusamoti

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