あとがき

キャラクターその⑦『書くのが楽しくてたまらない執筆ジャンキー』

「今回の企画を簡単に説明しますと……」


 天使の笑みを浮かべて関川二尋はこう告げた。


「……ありとあらゆるキャラクターを書けるようになれ、に尽きます」


 それから目の奥に悪魔の炎をちらつかせて続けた。


「問題はそこにリアリティーがあるか、キャラクターが生きているか、です」


   ○


 そう、淡々と創作を続けていくと『なんか同じようなキャラクターばかりが登場している』なんてことがある。意図して避けていても、なんか根っこがみんな似てくる。それは外見だったり、中身だったり。


 書けば書くほど、得意なキャラクターばかりが出てきて、ジャンルが違うはずなのに同じような作品になっている。なんならストーリーすら似通ってくる。新しいことに挑戦しているはずなのに、不思議といつものようにまとまってしまう。


 それはそれでいいのかもしれない。

 それが完成された自分の味とか個性、そう割り切れるなら。


   ○


 


 わたしもそう。


   ○


 同じものを書いてもつまらない。自分の中にある可能性をもっとみたい。新しいことにどんどんとチャレンジしてみたい。誰も書いたことのない世界、キャラクターを書いてみたい。


 今回はそんな執筆ジャンキーたちに向けて立てた企画だった。


 


   ○


 年代と性別をバラバラにして、ちょっと癖のあるタイプのキャラクターをお題として提示した。もっともそのキャラクターはなにかの映画や、アニメや、日常なんかで時折見かけるタイプにしたつもりだ。

 それでもこの六人のキャラクターを一つの作品の中にまとめて取り込むのはかなりの苦労があったと思う。

 実際にわたしも参加してみて、その難易度の高さに結構悩むことになった。


   ○


 ついでに断っておくと、自分が書いていた作品(トリタテ日報)に寄せてキャラクターを提示したことは一度もない。それは回答者の皆さんに対してフェアじゃないからだ。まずはお題キャラクターありきで、六人も最初からある程度設定はしていた。

 だから自作を書きながら何度も思った。自分が出題者でありながら、なんてつなぎづらいキャラクター設定をしているのだ、と。


   ○


 このお題パートの作成もかなり大変だった。定型のパターンの踏襲、主人公と上役の性別のぼかしと、なにも限定しないようにする文章(つまり広げやすい設定)、なによりお題キャラクターの説明の加減の難しさ。


 普通はキャラクターに色を付けて濃くしていくものだが、逆に色を無くし、薄めてゆくという真逆の作業をしていた。難しいわけだ。


   ○


 それから今回の企画は二週間置きで、全六話と緩めのペース設定にした。自分の作品を書いたら、参加者の書いた作品をじっくり読む時間も欲しい、という要望も多々あったからだ。そこに関してはいいペースだったように思う。あまり長々とやるものではないし、短すぎてもつまらないだろうし。


 といろいろ考えてやっていたのだが、それでも見通しが甘かった。

 書き手として参加したから断言できる。


   ○


 この企画は『鬼』だった。

 難易度が過去一番に高くなってしまった。

 しかも一話限りの短編にできる感じじゃなかった。


 すみません。


   ○


 今回の企画を書ききるには、最初からある程度の許容のある設定が必要だったり、そこに書きなれないキャラクターを入れる苦労だったり、オリジナル要素との折り合いポイントを見つけるのがむずかしかったり、中編としてまとめるにはかなりの無理があったと思う。そこを考えるだけでもかなりの時間を必要としたはず。つなぐためのストーリーにかなりの文章が必要だったはず。


   ○


 


 中盤で幕間を思いついて、ミスリードを仕込んで、ようやく中編としての体裁がまとまったときにはホッとしたものだ。そこからは一気に書き上げたが、これはたまたま前半の設定が甘くしてあったせいだなと、しみじみ思ったものだ。


   ○


 同時に思うことがあった。この苦労をたぶん参加者のみんなが感じてるだろうな、と。自分だけじゃないだろうな、と。不思議な連帯感というか共感のようなものを感じているにちがいないと。


 こう、ニュータイプ同士がつながる不思議な感覚みたいな。

 みんなで一斉に洗面器に顔を突っ込んでいるような。


   ○


 まぁ結局何が言いたいかというと、この企画に参加して書くのは本当に大変だったろう、ということだ。それだけにラストまで書き上げた人たちは本当に頑張ったなと、まさに執筆ジャンキーだなと思ったというわけだ。


 そうそう、どんな作品であれ、書き上げた、完結した、という喜びは何事にも代えがたいもの。一足先にゴールされた方は、そんな多幸感を味わっていただけたんじゃないかと思う。


 作品が完成した! 『完』! もう最高の感覚!

 苦労した作品であればなおの事。


   ○


 この時点でまだ完結まで漕ぎつけてない書き手さんもいますが、それだけ大変なことなのだとみんな分かっている。だから完結できるのをいつまでもお待ちしております! なんなら何年だって待ってる! 後で完結してもちゃんとノートなんかでお知らせしてフォローするから安心して書ききってほしい!


 と読者一同に代わり、取り立てのプレッシャーをかけておきます。

 まぁもちろん無理強いするものではないけどね。


   ○


 まぁいろいろと反省の言葉を並べたけど、同時に手ごたえも感じていた。なんといってもこれだけのキャラクターを一作品に登場させることができた、書ききることができた、というのは今後の創作の糧になっただろうと。


 この企画がなかったら書くことがなかったかもしれないキャラクター達。しかも同じお題でありながらも作者さんそれぞれの個性がつぎ込まれたキャラクター達。そんなキャラクターたちがたくさん生まれたのをみて、これは本当に楽しい企画になったな、と思った。


 願わくばこれをきっかけに作者さんたちの創作の幅が広がっていたならうれしいなと、そしてやはりそれこそが、この企画の目指していたことだったのだと、改めて思った。


   ○


 最後になりますが、書き手として参加してくださった方々、本当にありがとうございました。皆さんの作品、どれも作者さんらしさがあふれていて楽しい作品でした。


 そして読み手として参加してくれた方、たくさんのコメントがつけられているのを見て、とてもうれしくなりました。やっぱり感想が届くというのは、書き手としてなによりうれしいことだと思うのです。改めて感謝の気持ちを。


   ○ 


 さて。ハーフ&ハーフ、これまで三回を実施してきましたが、いかがでしたか?


 まぁかなり、みなさんの創作時間を削っている気がしてますが、同時に得るものもあったと思います。読んでくれる人とか、交流とか。それこそ完成した喜びとか。


 次回はもっと気軽に参加できるような企画にしようかな、なんて思ってますが、まだわかりません。


 しかしですね、これまで参加してくれた方みんなが楽しい企画だった、交流が広がった、との声をよく聞いております。書くことを心底楽しんでいる執筆ジャンキーの皆様との交流は何よりも得難く楽しいものです。そういう機会はなるべく作っていきたいなと、思っております。


 なんか最後まで文章が乱れっぱなしですみません。


 とにかく改めてここに感謝の気持ちを。

 関わってくれたみなさん、どうもありがとう!


 ということでまた!



 関川二尋

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ハーフ&ハーフ3 ~ロープレ編~ 関川 二尋 @runner_garden

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