キャラクターその⑥『ひとこと余計なお嫁さん』

「相手によって態度を変えることなく、自分の思ったままをきちんと話せる、これは大事なことですね」


 天使の笑みを浮かべて上役はこう告げた。


「そういうことが自然にできるというのは、その人のキャラクター、持ち味が大事な要素になります」


 それから目の奥に悪魔の炎をちらつかせて続けた。


「だからこそ、一歩間違えばそれは『毒舌』と呼ばれることになります」


 相手の気持ちを考えず、その場の空気も考えず、思ったことをそのまま口に出してしまう人がいる。悪意がなければそれは素直さという美徳になるが、度を超すとたちまちそれは毒舌となる。


「一度口から出た言葉は戻すことができません。たとえそれが真実であろうともね」


 ゴクリと唾を飲み込む。

 いよいよあの人の回収がやってきたのか。

 上役の言葉だけでそれを察する。


 今回のお客さんはごくごく平凡な中年女性。旦那さんの実家で義両親と同居し、専業主婦をつとめている。


 愛嬌があって性格も明るいのだが、とにかく義両親との喧嘩が絶えないらしい。

 わたしから見る限り、その原因の一つは彼女の余計なひとことにあると思う。

 

 あの人も悪い人ではないんだけど……とにかく口が悪いし、悪いと思ってないからよけいに始末に負えないのだ。

 

 かくしてわたしは憂鬱をずるずると引きずりながら、今日も顧客のもとに足を運ぶのだった。


 →→→ コメント欄へ続く!

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