キャラクターその⑤『威厳はあるが軽薄な爺さん』

「人間は誰しも平等に歳をとっていくものです……」


 天使の笑みを浮かべて上役はこう告げた。


「……人生経験を積み、他人の良いところ、悪いところを理解し、人としての器が大きくなっていくものです」


 それから目の奥に悪魔の炎をちらつかせて続けた。


「……でも現実は必ずそうではありません。むしろ歳をとることで意固地がすぎたり、わがままになったり、威張り散らしたり」


 たしかに言うとおりだ。優しい老人がいる一方で『老害』をまき散らす者もいる。


「歳をとったからこそ魅力的になる、そんな歳の取り方をしたいものですね」 


 歳をとることはなんとなくネガティブにとらえられるものだ。

 外見だってそうだ。しわが増えたり、白髪になったり、髪が薄くなったり。

 だがそういうものを差し引いても魅力的な老人はいる。


 話が面白かったり、的確なアドバイスをくれたり、優しく怒ってくれたり。

 年月を重ねることでしか生まれない、ワインのように熟成した精神とでもいえばいいだろうか。 


(そうか、今日はあの人の集金日ってわけか)


 今日の回収先はまさにその老人。

 しかし熟成とは無縁の、なんとも軽薄な感じの爺さんなのだ。

 いつまでも気が若い、と言えばそうなのだが、それ以上になんかまったく重みがない人なのだ。

 むしろ子供がえりでもしているような……


 かくしてわたしは憂鬱をずるずると引きずりながら、今日も顧客のもとに足を運ぶのだった。


 →→→ コメント欄へ続く!

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