後編 『あーちゃん』と私達


 『一生のお願い、聞いて』



 その後、画像が送られて来ました。

 『ちー』を保護していた団体のホームページと、一匹のマルチーズ。


 『この子、欲しい』


 どうやら母は『ちー』が亡くなってからも、ちょくちょく保護団体のホームページの里親募集を見て、ポメラニアンを探していたらしいのです。


 半年以上、ポメラニアンを探していたけど、中々居なかったみたいで、何故かこの画像のマルチーズを見てピンと来たらしい。


 このマルチーズ、七十頭位で多頭飼いされていたみたいで、育てきれなくなって都内各地の保護団体が引き取った内の一匹だった、らしい。 その辺は詳しく分からないけど。


 七十頭って……、劣悪な環境だったわよね。 それと同時に鈴音さんの事を思い出しました。


 私には『可哀想だから飼う』とか『可愛いから』とかの感情でペットを飼う心境ではないし、育てる覚悟もありませんでしたが、母は『犬無しの生活なんて考えられない』と言って頭を下げて来ました。


 普段、自分が悪くても中々謝ったりしないオレ様、殿様の母が私に頭を下げた事にビックリしました。


 『ちー』が居なくなった後の母は、私以上に元気が無く(そりゃそうよね、一日中一緒だったんだから)一気に老け込んだ気がして前より更に怒りっぽくなり、あまり笑わなくなっていました。


 そんな母と、鈴音さんの真摯に動物と向き合う姿が重なり、私も覚悟を決めました。



 『ちー』も、元気になる家族の姿、見たいよね?



 ※※※



 その後、保護団体に連絡を取りそのマルチーズとお見合いをしました。


 酷い環境で育ったなら、人間嫌いで体も病気や異常があるかも、……なんて思っていたら、全然違って人懐っこい可愛らしい仔犬でした。 流石に痩せ細っていましたが……。


 事前に『人懐っこい』『ワクチン接種済み』などは知っていたけど、会ってみない事にはね……。


 そこには他にも色々な犬種、猫達が一緒に暮らしていました。


 団体の職員さんに話を聞いたら、この多頭飼いは『近親交配』(人間で言うところの『近親相姦』ね)

で増えていったみたいで、そうすると短所をより濃く受け継ぐ事があるらしい、具体的には奇形や感覚障害などの先天的障害があるかもしれないとので、その辺も理解した上で検討して下さいとの事でした。


 更に他にも複数人応募者がいるので、後日連絡しますと言われて私達のお見合いは終了しました。


 『あ〜、コレ、ダメなヤツじゃん』


 帰りの車で母はとてもガッカリしていました。

 今日会った子とは別の、五歳〜七歳のマルチーズでもいいとまで言って、とりあえず結果待ちです。



 ※※※



 後日、仕事をしていると母からLINEが来ました。


 先日お見合いした時に撮った画像と共に、『この子、ウチの子♡』


 母曰く、『ちー』もこの団体の里親募集出身だったのが良かったんじゃない? って。


 そして二週間のお試し生活を経て、晴れて我が家の一員となりました。

 飼う条件として、私に名前決めさせてくれるって言ったのに、(前が『ちー』だったから、『ポン』『ロン』にしたかったの)俺様な母にあっさり却下され、


 「この子、なんか『あーちゃん』って感じしない?」


 ……『あーちゃん』に決まりましたよ、ぐすん。

 


 ※※※



 そして『あーちゃん』が我が家に来て一ヶ月が経ちました。


 酷い環境で多頭飼いされていたとは思えない良い子で家族全員驚いてます。(トイレはまだ上手く出来ないけどね)

 

 母は、「ポメラニアンしか飼った事無かったから分からなかったけど、ポメラニアンってバカだったのね〜!」


 ……うん、否定は出来ないわ、そこも含めて可愛かったのよね♪


 すっかり母に懐いて(普通そうよね、一日中一緒に居るんだから)ご満悦です。


 私にも父にも懐いて仰向けになって『お腹撫でて』とかするクセに、私達が帰ってドアを開けると狂った様に吠えまくるの。


 それを見て更にドヤ顔の母は「私が外出して戻って来ても吠えないわよ♪」


 我が家に『あーちゃん』を中心に笑顔が戻ってきました。


 母はまるで孫をあやしているおばあちゃんの様に可愛いがっています。


 その孫で勘弁して、私に期待は禁物よ。


 その事を鈴音さんに報告したかったんですが、近況ノートとか更新されていなくて、もしかしたら『カクヨム』辞めちゃったかしら? 

 ……なんて思って一ヶ月程経った頃、鈴音さんが近況ノートを更新しました。


 ようやく新しい家族の事を報告出来たと同時に、この事を書いて皆様に知って欲しいと思いました。



 無責任、軽はずみな気持ちでにペットを飼うのは本当にやめてもらいたいです。


 保護犬、保護猫、……保護されるのは運が良い方で、それでも酷い環境で育って健康な状態の子は一握りだと思います。


 また、保護団体で生活して新たな飼い主を見つけられない高齢の犬、猫もいます。


 もし、本気でペットを飼う気があるのなら保護犬、保護猫の事も選択肢の一つとして考えて欲しいとな、思います。


 そして最後に私に『あーちゃん』を迎え入れる覚悟と勇気をくれた鈴音さん、ありがとうございました。


 あと『ちー』、新犬の『あーちゃん』だよ、私はずっとキミの事忘れないからヤキモチ焼かないでね。



終わり




♪読んで頂き、ありがとうございました♪

 


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

カクヨム初心者の独り言番外編 〜ペットを飼うという事は〜 🌸桜蘭舞🍒@暫くお休みします! @sakuran108

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ