第41話
外がすっかり暗くなると、部屋の大掃除を一旦切り上げ、僕はこたつで横になった。うたた寝のつもりだったのに、しっかり眠ってしまったため、諒馬が来たことには気付かなかった。
ふと目を覚ました僕は、すぐさま身体を起こし、キッチンの方を振り返った。
「熟睡でしたね」
「あぁ、ごめん。全然気付かなかった」
僕はゆっくりと立ち上がり、諒馬の方へ歩み寄った。
「ステーキか」
諒馬が買ってきたのは、初めて僕の部屋に来た日に、一緒に夕食をとったステーキ専門店の弁当だった。
「ここのステーキは、僕にとって特別ですからね」
「僕にとっても特別だよ」
「そうですね。二人にとってですよね」
「あっ、スープがある」
「今日で仕事納めなんですよ、って店長に話をしたら、サービスしてくれました」
「あぁ、そうなんだ」
「ここのスープ、何気に美味しいですよね」
「そうだな。玉ねぎもたくさん入ってて」
「じゃあ、温め始めますね」
ステーキと付け合わせの野菜を盛り付けた皿を手にすると、諒馬は電子レンジの前に移動した。僕は洋室に戻り、台拭きでこたつテーブルを拭いてから、温め終わった料理を運んでいった。
発泡酒の缶とグラスをこたつテーブルに置くと、もう運ぶものはないのに、ついキッチンに来てしまった僕は、何も持っていない諒馬と向かい合った。
「あぁ、あの……」
「貴史さん」
言葉に困った僕が、頼りない声を漏らしたところで、諒馬が僕の名前を呼んだ。
「大事な話は、食べてからにしませんか?」
「あぁ……、そうだよな」
「せっかくのステーキですから」
諒馬は微笑んだのだけど、当たってほしくない予感が現実になりそうな気がして、僕は頬が強張るのを感じた。
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