第14話
数年振りかに利用した直通の特急電車を降り、有人改札から出ると、何となく見覚えのある顔が目に入った。向こうもそう思ったようで、あっと驚いたような表情を見せた。
「濱本君?」
「長内さん?」
僕に声をかけてきたのは、高校時代の同級生だった長内だった。
「そう。やっぱり、濱本君だったんだ」
「あぁ……、久し振り」
「本当だよ。大学一年の夏休み以来だもん」
「あぁ、そんなになるのか」
「濱本君、同窓会、全然来ないし」
「あぁ……」
同窓会は年末やお盆に開催されることも少なくなかったのだけど、帰省していながら欠席を続けていた僕は、何となくきまりが悪かった。
「私も、十年くらい前から、全然行かなくなったんだけど」
「あぁ、そうなんだ」
「帰省?」
「そう。長内さんは?」
「私はずっとこっちだから。今日は、弟が家族を連れて帰ってくるから、それで迎えに来たんだけど……。あっ、来た」
長内が声を上げたので、改札の向こうへ目をやると、妻と思われる女性と二人の子どもを連れた男性が手を上げているのが見えた。
「じゃあ……」
「あっ、濱本君、何日までいるの?」
「六日の午前中に戻る予定だけど」
「こっちにいる間って、友達と会う予定はあるの?」
「いや、予定は全然入れてない」
長内は何か言おうとしているように見えたのだけど、小さく手を上げたので、僕は小さく頷き返し、僕たちは会う約束をすることもなく別れた。
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